日本代表で才能を開花させた野口竜司 リーチ、田中が称賛「大学生と思えない」
「どうしたら自分の強みを出せるのか、必要なことがわかった」
体の大きい外国勢との戦いから多くを学んでいる 【斉藤健仁】
それは3月にジュニア・ジャパンとしてフィジーで戦ったパシフィック・ネーションズカップ(PRC)のフィジー・ウォーリアーズ戦だった(16対39。野口は初戦のサモアA代表戦はメンバー外だった)。なお今年のジュニア・ジャパンから遠藤哲HCが指揮を執り、日本代表、サンウルブズとほぼ同じ戦術で戦っている。
「フィジー・ウォーリアーズでは失敗しましたが、成長することができました。ミスが多くて、ラックを作らない、(ジョセフ流のラグビーである)アンストラクチャー(崩れた局面)から攻めるにはどういうことをやらないといけないか、どうしたら自分の強みを出せるのか、必要なことがわかった。だから次につなげられました」
体格の大きなアイランダーのチームに対して、野口はボールキャリアとしてはまともにいくのでなく半身をずらしたり、緩急やボールのもらい方を工夫して相手の外や内を取ってゲインし、FBとしてハイパントキャッチやディフェンスでは「決して足が速い方ではないので、判断を良くしてプレーする」ことを徹底し、最終戦のトンガA代表戦では42対33の勝利に貢献し、過去最高の2位という結果を収めた。
憧れの山田とのプレーが飛躍のきっかけに
WTB山田章仁(左)と組むことで、日本代表としてのプレーを吸収している 【斉藤健仁】
1戦目のアウェーの韓国代表戦(47対29)では、普段と違うWTBとして出場していた野口は、お世辞にも目立った活躍を見せることはできなかったと言えよう。ただ、「高校、大学とラグビーをやってきて、ターンオーバーした後のボールをどこに運ぶのかなど日本代表のラグビーはすごく新鮮です。自分の考えに固執していた部分の幅が広がり、自分よりレベルの高い選手とプレーすることで、パスの距離や立ち位置などが変わってきました。そういう部分でもっとレベルを上げないと、と感じる部分がありました」と刺激を受けていた。
そして、ターニングポイントになった、もう一つの試合が、2戦目のホームでの韓国代表戦(80対10)だった。15番を背負って見違えるような安定感あるプレーを見せた野口は、実は、日本代表で初めて、「アキさんのような選手を目指したい!」と慕う、15年W杯組のベテランWTB山田章仁とともにバックスリー(WTB、FBの総称)を組んでプレーした。
「アキさんは、ポジショニングなども具体的にコミュニケーションを取ってくれますし、コールも『一生懸命叫ぶとパニックになるので、しっかりと伝える』とかアドバイスをもらえて勉強できました。試合だけでなく、練習中もずっと声をかけてくれるので、自分としてはありがたいですし、言われたことだけでなく自分も出していけるので、やりやすさも感じます」
もともとスキルが高く、判断力に優れ、勘のいい選手だった野口。パナソニックや日本代表、スーパーラグビーといった国際舞台を経験してきた山田の薫陶を受けて、FBとして、そしてジョセフHCが指揮する日本代表では、もっと、どういったプレーをすべきなのかを学んで、吸収したというわけだ。
「W杯をターゲットとしてやっていきたい」
ジョセフHCは「松島と同じバスに乗ることができた」と表現 【斉藤健仁】
そんな野口はルーマニア代表よりも強い、アイルランド代表と対戦して、「足りない」と感じたことがあった。それは接点でのプレースタイルだった。「アイルランド代表はブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)のプレッシャーがルーマニア代表より強かった。それに対して、フィジカルをつけるのか、(判断を磨き)先にスピードで入るのか、自分の中では明確ではありません。練習などを通じて自分がどっちのタイプか見極めていきたい」
W杯の“前哨戦”となった、この2試合の活躍で野口は、ジョセフHCの言葉を借りるなら「19年に向けて、松島と同じバスに乗ることができた」と言えよう。本人もそれは自覚しており、「ジャパンのラグビーをやっている中で、自分の中でクリアになっているし、W杯をターゲットとしてやっていきたい」と胸を張った。
世界最高峰のFBであるオールブラックス(ニュージーランド代表)のベン・スミスのプレーを見てもわかる通り、最後尾の選手の安定感はテストマッチで勝つためには必要な要素であり、野口が実は才能豊かなプレースキッカーでもあることもチームにとっては心強い。「鉄は熱いうちに打て」という格言よろしく、若きFBは今春、一気にその才能を開花させて、19年のポジション争いに名乗りを挙げた。