日本代表で才能を開花させた野口竜司 リーチ、田中が称賛「大学生と思えない」

斉藤健仁

強豪・アイルランドからトライを奪う

アイルランド代表からトライを奪うなど、敗戦の中でも光ったFB野口竜司 【斉藤健仁】

 あの五郎丸歩が付けていた「15番」を背負い、ジャパンで5試合連続先発中なのが、大学生選手であるFB野口竜司である。

 6月17日、ラグビー日本代表(世界ランキング11位)は、静岡・エコパスタジアムで、2019年のワールドカップ(W杯)での対戦が決まっているアイルランド代表(対戦時は同4位。現在3位)と対戦した。主力11人が抜けた若き「緑の軍団」に対して、日本代表は前半だけで4トライを与えて22対50で敗戦した。

 ただ、そんな中でも光明はあった。東海大4年の野口は、「自信に満ちあふれた選手。(先週の試合で)非常に良いパフォーマンスをしたのでもう一度チャンスを与えた」とジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が評価するように、6月のテストマッチ期間で、19年に同じプールになる可能性が高いルーマニア代表戦(33対21)に続いて先発、最後尾で安定したキャッチングやラン、タックルだけでなく、後半19分にチーム初トライを挙げるなど存在感は十分だった。

 自ら強気のステップで持ち込んだトライの場面を聞くと、野口は冷静に「FWがすごく頑張ってくれて、トイメン(自分をマークする選手)が上がって、インサイドの選手が上がっていないのが見えて、(ギャップができていたので)いい形でランできた。前に出ようという意志がそこに出せたことがよかった」と振り返った。

リーチ「自信もついてきて頼りがいがある」

国歌を斉唱する野口(中央)。アイルランド代表戦では、W杯でも活躍したWTB松島(左)とバックスリーを組んだ 【斉藤健仁】

 そんな野口に対して、大学の先輩であるFLリーチ マイケルが「大学4年生と思えないほど。後ろのカバーで、全部ボールをバウンドさせずに、ピンチを防いでいた。自信もついてきて頼りがいがある」と言えば、スーパーラグビー経験豊富なSH田中史朗は「すごい、いい選手です。キック処理もできているし、戦術に沿ったプレーも判断もいい。安定感、安心感あるプレーをしている」と手放しで褒めた。

 野口はトップリーガーではなく、サンウルブズなどのスーパーラグビーも経験していない(追加招集の帝京大・尾崎晟也と2人だけ)。
 彼がなぜ、19年のW杯の“前哨戦”となった試合で、サンウルブズやサントリーで主にFBで活躍するユーティリティーな松島幸太朗からポジションを奪い取る形で躍動できたのか。

東海大では1年生からスキル、判断能力の高さを発揮

トライだけではなく、ドロップゴールも狙える判断力とスキルの高さが魅力 【斉藤健仁】

 近鉄花園ラグビー場にほど近い、東大阪市立枚岡中で、兄・大輔(近鉄)の影響もあり、ラグビーを始めた野口は、東海大仰星高校時代には1、3年で花園(全国高校ラグビー大会)に出場し、3年時は優勝も経験した。そして高校日本代表、U−20日本代表、ジュニア・ジャパンと確実にエリート街道を歩んできた。

 兄と同じ東海大に進学した後も、大学1年からFBのレギュラーとして活躍し、大学選手権準決勝の筑波大戦では16対17で敗戦し、人目をはばからず悔し涙を流していたが、3本のDG(ドロップゴール)を決めるなど持ち前のスキル、判断能力の高さを見せていた。そして昨春4月のアジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)の韓国代表戦で、日本代表初キャップを獲得した。この段階でも個人的には、19年W杯ではなく、その先の代表に絡んでくる選手ではないかと思っていた。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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