宮市亮はもう一度輝けるか―― 完全復帰へ、ベースを作った16-17シーズン
宮市の強さは「希望を捨てない」こと
宮市の強さは、どんな障害が襲い掛かろうとも希望を捨てないところにある 【Getty Images】
なかなか本領発揮できない宮市について、『モルゲンポスト』紙はそんな見出しで記事を掲載したこともあった。後半戦に向けた準備期間に行ったスペイン合宿で、一度リセットボタンを押して、気持ちを新たに取り組もうとしたが、はやる気持ちを抑えるのはたやすいことではない。
少しでもギアを上げ、気合いを入れようとすると、体がすぐに「まだ早い」とブレーキをかけてしまうのだろうか。この合宿中でも、太ももの筋肉損傷で数週間我慢しなければならなかった。宮市は「やりすぎちゃったのかな。もっと我慢強くやらなきゃいけなかった」とこぼしていたと地元紙が報じていた。
だが、この男の強さは、どんな障害が襲い掛かろうとも希望を捨てないことだ。「プレーできないのはもちろんつらいこと。でもサッカー選手にとってけがは付き物だと思うから。これまでに多くのけがを負ったけど、それが僕を押しつぶすことはない。付き合いながら、やり通していくもの」と『モルゲンポスト』紙に明かしたコメントからもそれがうかがえる。
このコメントを読んで、冒頭で触れたシュツットガルト戦後の談話を思い出した。開幕戦で出場したことについて尋ねると、自己分析をしながら冷静に自分の現在地をこう語ってくれた。
「コンディションはすごく良いです。去年はピッチにすら立っていなかったので、去年に比べれば、順調にきていると思います。シーズンは長いので、コンディションだけはしっかり維持して頑張りたいです」
「チームとして、こうして開幕を迎えるのが僕自身初めてのこと。プロになって、いつもレンタル(移籍)で、開幕後に何試合かしてから参加して……という感じでした。今はチームにすごく溶け込めている感じがします。2年目のアドバンテージ、そういうのはあると思います」
「(けがに対する)恐怖心はもう全くないです。とにかく、けがなくシーズンを送りたいというのが本音です。そこにフォーカスしていけば、おのずと結果もついてくると思います」
“日本製ロケット”はまださびついていない
けがなくシーズンを過ごすことはできなかったが、けがと付き合いながらやっていくためのベースを作った年になった 【Getty Images】
苦難を乗り越えるプロセスで自分と向き合う時間を持ち、そこから次への道筋を作り上げることができる選手は、どんな状況からでも這い上がれる基盤を持っているといえるだろう。それだけに、この1年の取り組みが今後に向けてポジティブに作用するのかどうか、とても興味を惹かれるところだ。
一番最初に「また活躍することができるだろうか?」と重ねて聞かれたら、「それは分からない」と口にするはずだと書いた。現時点では、レギュラーポジションはまだ遠い。来季に向けてクラブも補強を考えることだろう。簡単な状況ではないのが事実だ。けれど、何かをきっかけにすべてを好転させるだけの要素も、今の宮市は持ち合わせていると思うのだ。
努力すればすべてがかなうということはない。だが、やるべき努力を見定めて、次に向けて歩き続ける人にはいずれチャンスが訪れる。チャンスが来た時にそれを生かし切るために、日々の取り組みが重要になるわけだ。全てがかみ合い、来季ピッチ上で躍動する宮市を見てみたいと切に願う。
“日本製ロケット”はまだまださびついていないのだから。