“メンドーサライン”を下回るイチロー、昨年までとは異なる外野4番手の立場
現地時間11日のパイレーツ戦で今季第2号本塁打を放ったイチローだが、打率はまだ“メンドーサライン”を下回っている 【Getty Images】
その時点ではまだ、身内のジョークだったようだが、2010年にメンドーサ本人がセントルイスの『ポスト・ディスパッチ』紙の取材に語ったところによると、翌年、パチョレックらが、開幕から打率の上がらなかったロイヤルズのジョージ・ブレット(現ロイヤルズ球団副社長)のことを、「そんなことじゃ、メンドーサラインを下回るぞ」とからかい、その後ブレットが、「日曜日の新聞でまず確認するのは、誰がメンドーサラインを下回っているかだ」と取材で話したことで、一気にその言葉が有名になったという。
以来、大リーグでは、例えば打率が下がり2割に迫ってくると、「メンドーサラインに近づいている」などと表現することが一般的となったわけだが、なんと今、そのメンドーサラインにイチローがおり、『マイアミ・ヘラルド』紙も先日、イチローの記事の中でメンドーサラインに触れていた。11日(現地時間)の試合では、8回に今季2本目の本塁打を放ったイチローだが、その試合終了時点で打率は1割9分8厘と低迷。これでも上がった方で、5月は1割5〜6分だった。
もちろんまだ打数は81にとどまり、仮に次の試合で5打数5安打なら、打率が一気に2割4分4厘に跳ね上がるわけだが、そもそも、その十分な打席数がなく、試合前の準備、試合の入り方、打撃のリズム、体力等々、難しいアジャストを迫られ、結果が出ないまま開幕2カ月が過ぎた。昨年は、あと44本で日米通算ながらピート・ローズ氏の大リーグ通算最多安打記録を超える、という状況で開幕し、6月15日に記録更新を成し遂げたが、今季はここまでわずか16安打である。
外野3選手ともそろって好調
2年前、89試合でスタメンに名を連ねたのは、クリスチャン・イエリチ、ジャンカルロ・スタントンの故障、マルセル・オズナのマイナー落ちという想定外のことが続いたからだ。昨年、62試合にスタメン出場したのも、スタントンの故障、不振などが理由だった。言ってみれば、今年こそが想定された起用ともいえる。
とはいえ、今年のスタメン出場がここまでわずか8試合とは……。
事情は、過去2年と対照的だ。イエリチ、オズナ、スタントンが本来の活躍を見せ、今年は故障もほとんどない。10日、スタントンが1打席目に右手首に死球を受けた。そのまま下がるとイチローが代走として出場し、スタントンは11日もスタメンから外れたものの大事には至らず、その試合で代打に立っている。
開幕前、仮に3人の状態が良くても、1週間に一度ぐらいは誰かが休養し、イチローがスタメン出場するのでは、とも見られていたが、8試合のスタメンのうち5試合がア・リーグの本拠地で行われた交流戦。誰も休まない。
休ませられなかった、という背景もある。
3人そろって調子が良い。一方でチームは6月こそ勝ち越しているが、5月は10勝18敗と大きく負け越し、厳しい戦いが続いた。マーティン・プラード、アデイニー・エチャバリアらレギュラーに故障が相次ぐ中、スタントンらを休ませる余裕などなかった。