“メンドーサライン”を下回るイチロー、昨年までとは異なる外野4番手の立場

丹羽政善

特殊な役割を担うイチロー

マーリンズの外野レギュラー陣が好調で、イチローにスタメンの機会が回ってこない 【Getty Images】

 もっとも、改めて全体の状況を俯瞰すれば、こうなる可能性も理解して、マーリンズとの契約、再契約を決断してきたのはイチロー本人である。

 2014年のオフ、オーナーのジェフ・ローリア氏がイチローの獲得を促すと、そのときGMだったダン・ジェニングス氏(現ナショナルズスカウト)は、こう考えたそうだ。

「獲得ができるものなら、ぜひしたい。でも、チームには若いレギュラーの外野手が3人いる。となると、イチローの役割はどうしても控えとなる。果たしてそれを受け入れてくれるだろうか」

 交渉でもそこを明確に伝えた。曖昧なままでは、イチローに対して敬意を欠くと考えたからだ。やがて、どんな役割でもかまわない、といった趣旨の返答が代理人を介してあったとき、少し驚いたそうだが、その時イチローは覚悟を決めたのだろう。

 しかし、3年目にして味わう現実は今、もどかしさを通り越している――。

 ただ、それを受けているイチローに対し、マーリンズは感謝こそすれ、失望はしてない。例えば、イチローに代えて若い選手を試してみては、という考え方は、現時点のマーリンズでは成立しない。

 そもそも若い有望選手がいないのだが、昇格させたところで、その選手は結局、代打要員となる。若い選手はどんどん試合に出して経験を積ませる、というのがメジャーの常識。昇格させるなら、スタメンで起用することが前提だが、イエリチ、オズナ、スタントンがいる限りマーリンズではそれはかなわない。マーリンズの外野の控えはやはり、少々特殊な役割であり、イチローにしか務まらない、とも言える。

 天気晴朗なれども、波高し。

 43歳にして、なお健気。荒波を乗り越える術を知るイチローは今、ぐっと足を踏ん張る。

2/2ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント