“メンドーサライン”を下回るイチロー、昨年までとは異なる外野4番手の立場
特殊な役割を担うイチロー
マーリンズの外野レギュラー陣が好調で、イチローにスタメンの機会が回ってこない 【Getty Images】
2014年のオフ、オーナーのジェフ・ローリア氏がイチローの獲得を促すと、そのときGMだったダン・ジェニングス氏(現ナショナルズスカウト)は、こう考えたそうだ。
「獲得ができるものなら、ぜひしたい。でも、チームには若いレギュラーの外野手が3人いる。となると、イチローの役割はどうしても控えとなる。果たしてそれを受け入れてくれるだろうか」
交渉でもそこを明確に伝えた。曖昧なままでは、イチローに対して敬意を欠くと考えたからだ。やがて、どんな役割でもかまわない、といった趣旨の返答が代理人を介してあったとき、少し驚いたそうだが、その時イチローは覚悟を決めたのだろう。
しかし、3年目にして味わう現実は今、もどかしさを通り越している――。
ただ、それを受けているイチローに対し、マーリンズは感謝こそすれ、失望はしてない。例えば、イチローに代えて若い選手を試してみては、という考え方は、現時点のマーリンズでは成立しない。
そもそも若い有望選手がいないのだが、昇格させたところで、その選手は結局、代打要員となる。若い選手はどんどん試合に出して経験を積ませる、というのがメジャーの常識。昇格させるなら、スタメンで起用することが前提だが、イエリチ、オズナ、スタントンがいる限りマーリンズではそれはかなわない。マーリンズの外野の控えはやはり、少々特殊な役割であり、イチローにしか務まらない、とも言える。
天気晴朗なれども、波高し。
43歳にして、なお健気。荒波を乗り越える術を知るイチローは今、ぐっと足を踏ん張る。