若手投手と行う“振り返り”の時間 吉井コーチの指導スタイル(2)

菊地慶剛

2016年は11勝9敗、防御率2.94の好成績を残した有原 【写真は共同】

 昨年4年ぶりに北海道日本ハムの投手コーチに復帰し、12球団トップのチーム防御率(3.06)を誇る投手陣を築き上げ、日本一奪取に貢献した吉井理人コーチ。連覇を目指す今シーズンは、開幕から投手陣のワンランクアップに取り組んでいる。中でも若手で構成される先発陣の成長を目指している。

「自分にとっても実験的」な指導法

「去年はうまくはまった感じがありました。特に先発投手は、名前を挙げると、有原(航平)、高梨(裕稔)、加藤(貴之)の3人は実質(今年が)2年目みたいなものなので、さらにレベルを上げてファイターズの中心選手になっていかないといけない。彼らにとって大切になってくるのは、経験と試合後の本人たちによる“振り返り”の時間ですね」

 そう説明する“振り返り”こそ、一方的に教えるのではなく選手自らが気づき学ぶことを重要視している吉井コーチならではの指導法といえるものだ。

「(この指導法は)自分にとっても実験的なものなんです。これがシーズンが終わって『良かったな』となるのか、それとも『あまり意味がなかったな』となるのか、わからないところです。

 実は去年から似たようなことをやっていて、去年はその3人に加え、井口(和朋)や白村(明弘)を含め全員で、“振り返り”について議論をさせていたんです。それを今年は1対1でインタビューみたいにやっているんです。一応、去年の段階で自分で考えることの下地はつくってありました。それが徐々に生きてきていると思いますよ。

 ちゃんと(“振り返り”の時間で)自分たちから『どうしたい』と言ってくれます。それが間違っているかどうかは別にして……(笑)。

 試合直後は頭が熱くなっているので、次の日にやっています。技術的な振り返りも必要ですが、場面場面で自分がどう思ったか、という感情面も振り返ってもらいたいんですよ。ピッチャーはそこがすごく大事なんです。ホームランを打たれると気持ちが上がったり落ちたりすることが投手はすごく多いので、気持ちが揺れた時に自分のパフォーマンスができるのが良い投手じゃないですか。

 たとえば有原の場合、ルーキーの時は審判の判定についても(感情を)顔に出していたらしいんです。なので昨年は、審判の判定に不服だったとしても、表情だけは出さないでいこうというのを目標にしてやっていました。それを守ってくれて、今ではそんなに気持ちを揺らさなくなってきていると思います」

1/2ページ

著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント