ピエース・ガスリー、日本で着実に進化中 スーパーフォーミュラからF1を狙う逸材

吉田知弘

開幕戦では思わぬ苦戦

レッドブルカラーの車を操るピエール・ガスリー 【写真:吉田成信】

 国内最高峰のフォーミュラカーレースとして今年も全7大会9レースが開催される全日本スーパーフォーミュラ選手権。現在マクラーレン・ホンダからF1に参戦中のストフェル・バンドーンも昨年同シリーズを戦い、今では日本のみならず世界から注目を集めるカテゴリーとなっている。

 今年は2016年のGP2(現FIA−F2)チャンピオンで、F1のレッドブル・レーシングでリザーブドライバーを務めるピエール・ガスリーが参戦。F1同様にレッドブルカラーのマシンが登場していることもあり、注目を集めている。

 ガスリーはフランス出身の21歳で、かつてセバスチャン・ベッテルをはじめ数多くの有名ドライバーを輩出している「レッドブル・ジュニアチーム」にも籍を置くドライバーだ。GP2チャンピオンに加え、今季のスーパーフォーミュラでの成績次第では来季F1にステップアップする可能性も大いにある。

 開幕前のテストでは並み居る強豪ドライバーを抑え、トップ3に入るほどのタイムをマークし、「バンドーンを超える逸材だ」と関係者の間で話題になるほどのパフォーマンスを披露していた。

 しかし、いざ開幕戦(4月22日、23日)の鈴鹿を迎えると、思わぬ苦戦を強いられてしまう。フリー走行からなかなか速さを引き出せずにいたが、予選ではしっかり帳尻を合わせQ3へ進出。最後のタイムアタックでも途中まではトップと遜色ないタイムを記録していたが、コース後半でミスをしてしまい大きくタイムロス。これが影響して8番手と悔しい結果になってしまった。

 予選で後方に沈んでしまうと、なかなか上位にはい上がるのが難しいスーパーフォーミュラ。決勝ではトラブルもありパフォーマンスをうまく発揮できず、10位でポイント獲得はならず。

「トラブルもあって本来のポテンシャルを発揮できなかったし、何より表彰台争いに加われなかったことが本当に悔しい。しっかりデータを分析して、次のレースではもっと上位を目指したい」とガスリー。

“こんなはずではなかった”と、心の底から悔しい表情を見せていたのが印象だった。

手応え感じた岡山でのレース1

 迎えた第2戦の岡山(5月27日、28日)、前回はF1のテスト走行もあり直前に来日するなど時差ボケが取れない中でのレースとなったが、今回は月曜に日本に到着。コンディションを整えてレースに臨んだ。しかし、ここ岡山国際サーキットは、初めて走ることもあり、慣れない部分も多く見られた。それが影響したのか、金曜に行われた練習走行でクラッシュ。いつもより長い2時間のセッションだったが、その半分を棒に振ってしまう。

「ちゃんとコースを攻め切ることなく終わってしまった。チームには迷惑をかけ申し訳ない」

 これまでの自信に満ちた表情から一転し、反省モードだったガスリー。今のスーパーフォーミュラは0.001秒のタイムロスも許されないシビアな戦いとなっており、こういったクラッシュがあると、翌日以降も流れが悪くなり、そのまま決勝でも結果が出ないことが多い。

 しかし翌日のフリー走行では、チームメートの山本尚貴と同じようなペースを取り戻し、走行経験の少なさを感じさせなかった。この週末は2レース制が導入され、土曜、日曜にそれぞれ予選と決勝を行うというスケジュール。レース1の予選では狭いコース内に19台がひしめく混戦の中でのタイムアタックとなり、13番手と出遅れてしまう。さらに決勝も序盤に他車と接触してしまいフロントウイングを破損。ピットで緊急交換を行なっている間に周回遅れとなり、勝負権を失ってしまった。

 それでも、ガスリーは翌日のレース2に向け有力なデータを集めるべく周回を重ね、19位でフィニッシュした。

 結果だけ見ると惨敗だったが、レース中のベストラップは全体の7番目である1分15秒374。ガスリー自身もレース2に向けて手応えを感じていた。

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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