攻撃の鍵は“左”、狙いが明確だった日本 U−20W杯 南アフリカ戦データ分析
立ち上がりはバタバタ
【データ提供:データスタジアム】
立ち上がりはバタバタ。南アフリカはのらりくらりとしたパス回しから、一発のロングボールで裏を突いてきた。単純な攻撃だが、日本はスピードへの対応に手を焼き、序盤の15分間でペナルティーエリアに6回の侵入を許した。前半7分に失点。逆に日本が敵陣ペナルティーエリア内でプレーできたのは、わずか1回だ。序盤は南アフリカのペースだった。
最初はスピードや球際の競り合いに、日本の選手が戸惑っていた。裏のスペースに走られたことだけではない。攻撃時も堂安律らに縦パスが入ったとき、体でボールキープしても、背後から足を深く伸ばして突いてくる南アフリカの球際の強さに慣れておらず、不用意なボールロストが目立った。
しかし、徐々に慣れた日本が押し返す。前半のポゼッション率は15分毎に46%から57%、62%と尻上がりに支配を高めた。同時に敵陣ペナルティーエリア内でのプレー回数が1回、3回、7回と増えているので、ボールを持たされた類のポゼッションではない。確実にゴールに迫っている。
持ち味を発揮した2人のレフティー
南アフリカ戦の先発メンバー。両サイドハーフの三好と堂安は共に左利き 【スポーツナビ】
「4−4−2」を敷く日本の特徴は、両サイドハーフにどちらもレフティーが入ることだ。左サイドは、突破力のある左利きドリブラーの三好康児。タッチライン際まで横幅を広く使い、ドリブルやコンビネーションで縦に突き崩す。
一方、右サイドに入る左利きの堂安律は、三好のように幅を取らず、中央に入ってポジションを取る。得意の左足でカットインし、ミドルシュートを狙うことができる。さらに2トップの後ろからゴール前に詰めるときも、左サイドからの折り返しに左足でダイレクトに合わせやすい。後半27分に堂安が久保建英の折り返しから決めたゴールは、その典型と言えるだろう。
左サイドに張る三好と、中央に入ってくる堂安。日本は2人のレフティーを使い、全体を左サイドに寄せて攻撃の形を作った。メンバー発表の記者会見を思い返すと、内山篤監督は次のように語っている。
「南アフリカはフィジカル中心で、そういった意味ではきちんとわれわれが組織の中で対応していく。当然、間延びしたサッカーをやられると難しくなってしまいますので、3戦ともに言えるのですが、われわれの生命線であるコンパクトに攻守にプレーしていくということが一番大事だと思っています」
間延びしたら、南アフリカのペース。日本はコンパクトにやることが生命線。全体を左サイドに寄せて、コンパクトな距離感でワンサイドを突破した。仮にボールを奪われても、コンパクトな状態から守備に切り替えられるメリットがある。これがうまくいった前半20分以降は、日本のペースだった。
同点に追いつくも、押し込まれた後半の序盤
日本代表のプレーエリア別のヒートマップ 【データ提供:データスタジアム】
幸先良く同点ゴールが決まった後半だが、日本が南アフリカのフィジカルに慣れたように、後半は南アフリカも日本の“左寄せ”に慣れ始めていた。三好に対するプレッシャーが早く、ドリブルに対しても複数人で囲い込んでくる。アグレッシブな突破を続けた三好には疲労もあったのか、後半はミスが急増した。
また、同点に追いつかれた南アフリカは、攻撃意識が高まった。日本も裏のスペースを突かれる警戒が強いためか、ラインを低く下げ、自陣に押し込まれるシーンが増えた。そのため、後半序盤の15分間は、ゴールを決めた日本が5回の敵陣ペナルティーエリア内のプレーを記録した一方、南アフリカも4回を記録して反撃。特に日本の左サイドを重点的に攻められ、三好が守備に下がりっぱなしになった。日本も全体として下がってスペースを消すのはいいが、下がりすぎて南アフリカの2次攻撃、3次攻撃を食らう展開になった。この時間帯は日本が同点に追いついたものの、逆に失点してもおかしくない場面があった。