宇野の後悔「2回転に逃げてしまった」 それでも光った状況に応じた判断力

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リカバリーし得点を稼ぐ冷静さ

今季の宇野の安定さはミスをリカバリーできる冷静さがあるからだ 【坂本清】

 だが、これは裏を返せば宇野の冷静さが光ったシーンとも言える。宇野は4回転トウループを下りた瞬間、「2つめのジャンプを2回転トウループにして、次のトリプルアクセルを跳べば、100点を超える」と判断した。初出場の国別対抗戦、そして団体戦という個人戦とは違うプレッシャーが掛かる中、一瞬でそこまで計算をしたのだ。

「確かに試合前から冷静ではありましたね。得点も計算通りで、演技が終わった時点で想像した点数と近い点数でした」

 今季の宇野は安定して好成績を残しており、非常に波が少ない。ミスをしてもうまくリカバリーし得点を稼げるのも、こうした冷静さがあるからだ。平昌五輪でも団体戦が行われる。まだ宇野が出場できるかは分からないが、状況に応じた判断力は不可欠なものとなる。

 しかし、冷静さが今回感じたような“逃げ”につながってもいけない。この反省を教訓に、宇野はこれまで同様、もしくはこれまで以上に攻める演技を心掛けることだろう。以前、五輪や世界選手権で優勝が懸かっているときに、リスクを冒すことができるかを問われ、宇野はこう答えている。

「そのときの自分になってみないと分からないですが、そういう大会の方が迷わずに挑戦すると思います。よく思うんですけど、攻め続けて失敗した方が自分は満足できている気がします。むしろ下手にノーミスして、ちょっと危ないジャンプのときよりもすがすがしい気持ちになるんです」

4回転フリップを後半に入れる挑戦

「4回転フリップを後半に入れる」と明言した宇野。今季最終戦でも挑戦する姿勢を示す 【坂本清】

 3月の世界選手権では、初めてフリースケーティング(FS)で200点超えを果たした。21日のFSでもその再現が期待される中、五輪が行われる来季を見据え、宇野はある挑戦を考えているという。

「4回転フリップを後半に入れようと思っています。普段は前半に入れているんですけど、フリップを最初の方でしか跳べないという自分の基準から、どこでも跳べるという基準に変えたいなと思って、試してみることにしました」

 プログラムの難易度は上がる。それだけミスをする可能性は大きくなるが、宇野はそのチャレンジをチームに還元したいと思っている。個人のレベルが上がれば、必然的にチームのレベルも上がるからだ。

「SPはすごく悪かったわけではないですけど、後味の悪い演技をしてしまいました。自分にも申し訳なかったし、チームということに逃げてしまって、みんなにも申し訳ない気持ちでいっぱいです。FSでは自分のやりたいことをやって、チームに貢献できればいいかなと思っています」

 ノーミスで滑り切ることができれば、自己ベストの更新は確実。今季最後の演技となるFSは、来季に向けても満足いく形で締めくくりたいところだろう。宇野の決意が、引き締まった表情から読み取れた。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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