最後にすべてを詰め込んだ記念興行に 豊田真奈美×東京03豊本 特別対談[後編]

スポーツナビ

女子プロレスに希望が持てる環境であってほしい

豊本 ちなみに、豊田さんは今の若い選手たちをどう見ているんですか?

豊田 うーん、今って環境があまり良くないじゃないですか? 昔は地上波テレビがあったり、いろいろな人に見てもらえる環境がありましたが、今は狭い世界になって、狭い中での女子プロレスかなって。本当は地上波とかでもっともっと見てもらえたら、もっともっと人気が出る選手もいると思いますけど。でも、テレビに出られない環境の中で、みんな頑張っているなって思っています。
 有料チャンネルは好きな人しか見ていないと思いますし、たまに地上波テレビに出ても、プロレス以外の“貧乏話”が話題になったり……。それじゃ夢がないですよね。
 私がプロレスに入った時期は、プロレスラーになったらお金持ちになれると思って頑張りました。やっぱりそういう希望が持てるところじゃないといい選手が集まらないし、もう1回希望が持てる女子プロレスに戻って欲しいです。

豊本 今は団体というより、個人の頑張りが中心になっちゃっていますよね。

豊田 というか、団体が多すぎるんですよ! 1つになっちゃえばいいのに……。

豊本 1つは難しいと思いますけど、確かに多いですよね。

豊田 昔の女子団体はJWPと全女とLLPWだけ。全女はそのころ40人ぐらい選手がいたんですよ。それで試合からあふれちゃう選手もいて、2班に分かれたりしたんです。それこそ「クラッシュギャルズ」も分かれて試合をしたりとか、試しにやった時期もあって、それぐらい選手が多すぎたんです。
 私たち若手は試合に勝たないと次の試合に呼んでもらえないので、同期のメンバーの間でもかなり給料の差もありました。勝てば次の試合が決まりますけど、負ければ間が空くので、お給料も減りますし。

豊本 へー、そうなんですね。勝てばお金が稼げるってことだったと。

豊田 でも今は、勝っても負けても毎回試合がありますよね? だから、「絶対、勝たないと」というハングリー精神がないかもしれません。私たちは毎回ガツガツしてました。

豊本 なるほどー。ということは、そもそも女子プロレスに入団するのも相当な数の中で競争をして、選ばれて入ってデビューしても、さらに戦い続けて、ギャランティーでふるいにかけられていたんですね。ずっと戦っていたわけだ。

豊田 そうですね。だから、案外、リングを降りると、ボーっとしちゃいます。(笑)
 もう、「バカヤロー」「コノヤロー」とか言いたくないですけどね。でも、30年間言い続けましたよ。

豊本 あとは「よっしゃいくぞー!」ですね。(笑)
 確かに試合中は声を出してますけど、終わった瞬間、コーナーにもたれてオフってますよね?

豊田 そうなんですよ。(笑)

いろいろな試合をしたいけど、デスマッチはNG!

――ちなみにこんな試合形式でやりたいとかありますか?

豊本 あ、そういえばローションマッチとかもやってましたよね。

豊田 やりましたね。またやっちゃおうか? ローション。止めるまでにいろいろなことをやっちゃうよ。

豊本 ローションマッチといえば、『ラスタとんねるず』で、「ジャイアント将棋」という企画もやっていましたよね。あれ復活してほしいなー。

豊田 あの企画でローションプロレスやりましたもんね。

豊本 (とんねるずの)のりさんと試合したり、面白かったですよねー。あとは豊田さん、ドランカーマッチとかもやりましたよね。

豊田 そうですね。私がやってないのはデスマッチぐらい。でも有刺鉄線とかはやりたくないです。ただでさえ体がボロボロなのに、これ以上ボロボロにしたくない! お父さんとお母さんが生んでくれた体をこんなにボロボロにしちゃったので、外見までボロボロにしたら申し訳ないですよ!

豊本 でも京子さんも電流爆破やったり、長与(千種)さんは電流爆破のリングに何度も上がってますからね。

豊田 痛いじゃん!

豊本 プロレスのリングは何でも痛いですよね?(笑)

豊田 痛いけど、生傷は嫌!

――例えばデスマッチでなく、Yシャツマッチとか?

豊田 あれは若い子じゃなきゃダメでしょ? 絶対、GAMIのことだから、Yシャツマッチをやるとなったら、お父さんみたいなYシャツを用意するでしょ、私に。

豊本 (笑)

燃え尽きて悔いを残さない引退ロードに

豊田「最後は完全燃焼して悔いを残さない」。豊本さん「豊田さんが泣いた姿を見たら実感するかもですね」 【スポーツナビ】

――それでは最後になりますが、引退ロードへの意気込みをお願いします。

豊田 まだあと半年以上あって、残り何試合というはっきりした数字が出ていないから、まだ実感がわいていないです。でも、これが9月、10月になったら、最後が見えてきて、どんな気持ちになるんだろうと。私も初めてのことなので、今からドキドキです。
 ですが、あと何試合やるか分からないですけど、本当に1戦1戦、思い残すことないように、大事に試合をし、戦ってくれる選手に感謝しながら、本当にこれ以上ケガが悪くならないよう、いいコンディションで引退当日を迎えます。最後は完全燃焼して、燃え尽きたいと思います。燃え尽きて、まったく悔いを残さない。

豊本 豊田さんが最後に泣くイメージがわかないですね。

豊田 私、泣くイメージが無いですよね。でも、結構、これも年かなって思うんですけど、涙腺が弱いんです。誰かの引退式でもウルッときちゃってます。
 今までは引退式でも涙は流さなかったんですけど、最近は見ていたらウルッときちゃうんで。年かなー。
 それこそ最後はマイクを持ってあいさつしたりすると思うんですけど、マイク苦手なんですよね。だから私、引退式のあいさつのときは、大号泣して話せないという感じでやっちゃおうかなと。

豊本 作戦言ったらバレバレじゃないですか!(笑) でも本当に引退式で豊田さんが泣いている姿を見たら、これでレスラー最後の区切りって実感するのかも知れませんね。

豊田 絶対泣くと思います。あいさつまで泣かないなかしれないですけど、みんなが頑張って紙テープとか巻いてくれて、それが飛んだ瞬間、「あ、終わった」と思って、自然と涙が出るかもしれませんね。
■豊田真奈美30周年記念興行「〜飛翔天女〜豊田真奈美引退」
11月3日(金祝)横浜・大さん橋ホール 開場14:00 開始15:00

【画像提供:OZアカデミー】

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