「勝つための補強」でタイトルを狙う神戸 監督は現場とフロントの一体感に手応え

高村美砂

ポジション争いの激化が良い緊張感をもたらす

6年間共に仕事をした田中はネルシーニョ監督について「とにかく結果主義です」とコメント 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 今季加入したDF渡部博文、MF大森晃太郎、MF高橋秀人、MFウェスクレイ、FW田中順也、FW大槻周平は、いずれもネルシーニョ監督がリストアップした選手たちだ。2月25日の清水エスパルスとの開幕戦では、渡部、大森、田中が先発出場。FW大槻とMF高橋はベンチ入りを果たし(大槻は途中出場)、第2節以降はMFウェスクレイも流れを変える切り札になっている。また、新加入選手が加わることにより激化しているポジション争いが、チーム全体に良い緊張感をもたらしていることも特筆すべきだろう。

 これは今年に限らず、ネルシーニョ監督がチーム力を高めるために毎年、選手たちに求めてきたことだが、そうした競争が選手の質、レベルがより高くなった中で行われるとなれば、当然チーム力は引き上げられる。柏時代には約6年間、ネルシーニョ監督と仕事をし、今年から神戸でプレーする田中は言う。

「監督はとにかく『結果主義』です。練習で調子が良ければいきなりスタメンに抜てきすることもあるし、逆に試合で結果を残せなければ、次の試合でベンチ外になることもある。おかげで日々の練習が、1つ1つのプレーが緊張の連続ですが、常に全員がモチベーションを落とさずにサッカーに向き合える。それが自然と選手個々やチームの成長、そしてグループとしての強さにつながっていくのだと思います」

レアンドロの不在の大きさを痛感

ポドルスキの合流はガラタサライのシーズン終了後。フィットするまでに多少時間を要するだろう 【写真:アフロ】

 ただ、一方で全く不安がないのかといえばそうではない。まだ序盤戦とはいえ、前節の浦和戦では堅守からのカウンターで勝機をうかがう試合展開の中で、そのカウンターの迫力を欠き、開幕戦で負傷離脱した昨季得点王であるレアンドロ不在の大きさを痛感したのも正直なところだ。レアンドロは左膝前十字靱帯損傷および外側半月板損傷で全治6カ月の長期離脱を余儀なくされている。

 また、獲得が発表された元ドイツ代表、ルーカス・ポドルスキの合流もトルコ1部リーグ・ガラタサライでのシーズン終了後で、フィットするには多少の時間を要するだろう。今後、チームとしてレアンドロ不在の穴を埋められるかは、タイトル獲得のための大きな課題となる。「勝つための補強」をもってしても、得点王に輝くほどの活躍を見せたエースの不在を埋めるのは簡単なことではない。

 もっとも、これまでも百戦錬磨の経験をもとに、“ネルシーニョ・マジック”とも呼ばれる手腕でチームをけん引してきたネルシーニョ監督のこと。それでも勝つための策は当然、描いているはずだ。

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著者プロフィール

関西一円の『サッカー』を応援しようとJリーグ発足にあわせて発刊された、関西サッカー応援誌『GAM』『KAPPOS』の発行・編集に携わった後、同雑誌の休刊に伴い、1998年からフリーライターに。現在はガンバ大阪、ヴィッセル神戸を中心に取材を展開。イヤーブックやマッチデーブログラムなどクラブのオフィシャル媒体を中心に執筆活動を行なう。選手やスタッフなど『人』にスポットをあてた記事がほとんど。『サッカーダイジェスト』での宇佐美貴史のコラム連載は10年に及び、150回を超えた。兵庫県西宮市生まれ、大阪育ち。現在は神戸在住。

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