大国・米国はWBCで盛り上がらず… ラテンアメリカでは対照的な反応

杉浦透

WBC連覇へ向けて調整するドミニカ共和国の選手 【MLB Photos via Getty Images】

 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開幕し日本では盛り上がっている中、米国ではまだまだ盛り上がりは聞こえてこない。大会が直近に迫っているというのに米国代表選手はギリギリまで所属するメジャーのチームでスプリングキャンプを行っている。国を代表するチームがこれでは、ファンも期待しようがない。特に例年と変わらずスプリングキャンプの話題ばかりで、WBCのお祭り騒ぎとは程遠い空気が滞っている。

価値観がまだ確立されていない大会

 ベースボール大国である米国がなぜここまで注目度が低いのか?

『Sportsnews.com』のライター、ジェイソン・フォスター氏は無関心のメディアやファンの気持ちをこう代弁する。

「エリートが勢ぞろいするベースボールをライブで見られることは悪くない。おそらくファンは少しは見るだろう。だがMLB機構が盛り上げようとしているほどファンの関心は高くないんだ」

 その理由は何なのか?
 フォスター氏は「五輪やサッカーのワールドカップに比べてWBCは歴史が浅いイベントで、国を挙げて戦う緊迫度、必要性がにじみ出ていない」と言う。さらに、「この大会がなにが何でも手にしたいタイトルという価値観が確立されてなく、あくまでちょっと豪華なエキシビションゲーム程度にしか捉えられていない」のが実情だと強調する。

 実際に米国では、有料のMLB専用チャンネル以外ではテレビでWBC特集やCMを見ない。これではWBCが歴史あるイベントとして根を張っていくとは考えにくい。MLBコミッショナーのロブ・マンフレッド氏は、MLBがWBCという大会の強化に本腰を入れていないという批判に対して「そんなことはなくWBCは今後さらに飛躍するポテンシャルを持つ」とコメントしているが具体的な手段やアイデアには言及していない。

メキシコでは政府、地元が一体に

 一方で米国をライバル視するラテンアメリカ諸国は対照的だ。米国のスポーツ専門チャンネル『ESPN』のスペイン語版である『ESPN Deportes』では、メキシコ代表チームを「メキシコ野球史上最強メンバーが武装してきた」と見出しを付けてチームを紹介。大会報道に力を入れている。

 メキシコチームの監督で元巨人のエドガー・ゴンザレスは、「メキシコは南部がサッカー人気、北部が野球人気の傾向だが、今回は南部のグアダラハラであえて1次ラウンドを実施することで、新規ファンを増やそうと野球関係者、政府、地元が一体となって今大会を成功させようとしている」と教えてくれた。

野球大国・米国打倒への執念

 前回覇者のドミニカ共和国やベネズエラ、プエルトリコでも野球の人気が高く、大会開催中は国中がお祭り騒ぎになる。ベネズエラのスター選手、ホセ・アルトゥーべ(アストロズ)は、「ベネズエラでは野球が国技。WBCでの試合中は学校や職場が一時休みになり、テレビにかじりつく程の野球好き」と言う。特に大国である米国打倒には執念を燃やしており、米国を倒そうものならその興奮はピークに達する。

 また、それらの国内リーグやマイナーリーグでプレーする選手にとってはショーケースの場という側面も持ち、WBCに集まるスカウトや各国の野球関係者の目に留まろうと必死にプレーすることも、盛り上げに一役買っているはずだ。

 米国での注目度の低さはイベントの歴史が低いだけなのか? 他国の様に王者の座を狙うハングリー精神に欠けるのか? 今後のWBCの継続と成功のカギを握る米国の“本気”が見たい。
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