侍Jには“理想的展開”の黒星だった!? 経験の少ない指揮官に必要な開き直り

中島大輔

3日の阪神戦、渋い表情で戦況を見守る小久保監督(写真左) 【写真は共同】

 これまでの調整モードから一転、3月7日に初戦を迎える第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)本番を想定した最終テストと捉えれば、3日に行われた阪神との強化試合はある意味、“理想的な展開”だった。

 先発の武田翔太が変化球のコントロールに苦しみ、2回3失点で降板。打線は阪神投手陣を打ちあぐね、試合中盤までゼロが続いた。8回表に1点差とした直後、クローザー候補でもある秋吉亮が1点を失った。そして、そのまま敗戦。

 WBCを制するにはこうした苦しい展開をどこかで乗り越える必要があり、本番前に経験できたのはプラス材料と言える。

 ただし、阪神戦では嫌な流れをひっくり返すことはできなかった。だからこそ試合後、小久保裕紀監督は心の揺れを見せたのかもしれない。

指揮官に見えた采配の迷い

6回無死一塁、小林に送りバントを命じたが… 【写真は共同】

 采配を迷ったと明かしたのは、3点を追う6回、無死1塁で迎えた9番・小林誠司に送りバントを命じた場面だ。成功した後にタイムリーが出たとしても、まだ2点をリードされている。負けたら終わりの決勝や準決勝で、こうした采配を振るのだろうか。ふくらはぎの張りにより実戦に投入できる状態ではない嶋基宏ではなく、ほかの捕手がベンチに入れば、小林に代打を送る選択肢はあったか。そう聞かれた指揮官は、胸の内をこう明かしている。

「本番だったとしても迷うところですけど、送りバントの可能性もあるなと思いました。去年(11月)の強化試合でもそうなんですけど、(最後となる)3番目のキャッチャーを出すときにはよほどリスクを覚悟でいかないといけない。あのシチュエーションでは、言ってしまえば3番目のキャッチャーを(交代で)いくと(試合終盤に)もうひと勝負できなくなるので、そのためには(代打の駒を)置いておこうかなとベンチで自問自答していました」

 起用できない嶋をベンチに置いていることで、現在の侍ジャパンは手詰まりを早く起こしていた。その嶋は2日、小久保監督に辞退を伝え、代わって埼玉西武の炭谷銀仁朗が追加招集されることが4日午前中に発表された。経験豊富な炭谷が加わることで、状況的には試合終盤の代打策などを打ちやすくなっており、小久保監督が勝負への状況判断を的確にしていくことが求められる。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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