背水の陣で臨むリバプールとアーセナル トップ4戦線への生き残りを懸けた決戦

山中忍
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提供:スポナビライブ

ベンゲルの「今季限り」を望む声が強まるアーセナル

両チームは今季の開幕戦で激突。そのときは4−3でリバプールが勝利した 【写真:Action Images/アフロ】

 一方のアーセナルでは、アーセン・ベンゲル監督に「今季限り」を望む声が強まっている。リーズなどで活躍した元FWで、引退後はメディアで働くアラン・スミスも、「退任の潮時」と唱えている識者の1人だ。「解任」でないあたりは、ベンゲルの「ファン」がそろうクラブ経営陣事情の他、人々が就任21年目の偉大なベテラン監督に抱く敬意のなせる業。筆者には「Jリーグからプレミアへの過去最高の輸出品」としての思い入れもある。それでもやはり、今季が「潮時」と思わせるアーセナルの停滞感は否定できない。

 くしくも今季の開幕節はリバプールとの対戦だったが(3−4)、ホームで観衆のブーイングを浴びた黒星発進は2年連続。リーグ優勝が非現実的となった後半戦では、CL初優勝の夢が16強の壁で砕け散るシーズンが、2月15日のバイエルン・ミュンヘン戦第1戦で大敗(1−5)したことで、今季で7年連続になろうとしている。

 今季は、チームの精神面が昨季までとは違っているはずだった。前半戦で、チェルシーに快勝(3−0)した第6節を含むリーグ戦14試合を無敗で乗り切っていた当時、「近年では最高の成熟度だ」と自軍を評していたのは他ならぬベンゲル。しかし、勝てば一時的にでも3ポイント差に詰め寄ってチェルシーにプレッシャーを掛けることができた第23節、アーセナルはホームでワトフォードに敗れ(1−2)、指揮官は「成熟度が足らない」と前言撤回を余儀なくされた。

 続くチェルシーとの直接対決(1−3)、試合の流れが敵に傾いた1失点目の場面では、セオ・ウォルコットが得点者のマルコス・アロンソへの追走を怠っていた。ここ一番でアーセナルが苦手の守備に泣いた試合が初めてでなければ、肝心の場面で守備の意識を疎かにした攻撃集団の主力もウォルコットだけではない。

両軍が背水の陣で挑む直接対決

アーセナルの前線で孤軍奮闘するサンチェス(左)。今回の対戦も撃ち合いとなるか 【写真:ロイター/アフロ】

 肝心の攻撃面では、メスト・エジルが見た目に自信を落としている。相手ペナルティーエリア付近でシュートはもちろん、パスにも迷いが感じられるプレーメーカーは、後半戦で1アシストしか記録できていない。周囲には、プレミア解説陣にも「ワールドクラス」と認められるようになったアレクシス・サンチェスの他、ベンチスタートが多くても調子は良いオリビエ・ジルーやルーカス・ペレス、若いアレックス・イウォビやけがが癒えたダニー・ウェルベックといった攻撃陣がいても、エジルは精彩を欠いている。

 逆に際立っているのは、前節ハル戦(2−0)でチームの全得点を上げ、続くバイエルン戦でも一矢を報いているサンチェスの孤軍奮闘。来季はCLに出場することもできないとなれば、彼がチームを去るシナリオが現実味を帯びる。片や、「今季限り」を望む声が増す中でも「4月ごろまでに決める」として、続投への意思をほのめかしてもいるベンゲルにすれば、サンチェス流失を避けるためにも、トップ4争いのライバルに負けるわけにはいかない。

 両軍が背水の陣で挑む直接対決。共に攻撃が身上である。アウェーゲームとなるアーセナルも、現トップ6対決で1勝2分け3敗と負け越していることから、ここで勝っておきたい意識があるはず(リバプールは4勝4分け)。両軍合わせて7得点が生まれた前回対決と同じ撃ち合いもあり得る。

 果たして、今季のトップ4を超えて来季以降をも懸けた決戦の軍配はどちらに?

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◆プレミアリーグ配信予定◆
3/4 (土) 26:15〜 リバプールvs.アーセナル
3/3 (金) 21:00〜 開幕節のアーセナルvs.リバプールを無料再配信

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著者プロフィール

1966年生まれ。青山学院大学卒。西ロンドン在住。94年に日本を離れ、フットボールが日常にある英国での永住を決意。駐在員から、通訳・翻訳家を経て、フリーランス・ライターに。「サッカーの母国」におけるピッチ内外での関心事を、ある時は自分の言葉でつづり、ある時は訳文として伝える。著書に『証―川口能活』(文藝春秋)、『勝ち続ける男モウリーニョ』(カンゼン)、訳書に『フットボールのない週末なんて』、『ルイス・スアレス自伝 理由』(ソル・メディア)。「心のクラブ」はチェルシー。

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