大勝の中に見えた侍ジャパンの理想 自分で状況判断して動ける選手の活躍

中島大輔

5回、二走・秋山と一走・坂本がダブルスチールを敢行。足でチャンスを広げ、その後の追加点につなげた 【写真は共同】

 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)までの実戦機会が残り3試合となった3月1日の台湾リーグ選抜戦で、野球日本代表「侍ジャパン」は大きな勝利を手にした。9対1というスコアを生み出したのは、小久保裕紀監督の目指す野球=プランA、そして戦い方に厚みを持たせるプランBがうまくはまったからだった。

成功の確信を得て仕掛けた重盗

 1対0で迎えた5回表、1死から2番・秋山翔吾がライト前安打、坂本勇人が四球で1、2塁とすると、筒香嘉智が初球をファウルした後の2球目、ダブルスチールを仕掛けた。2回から3イニング続けて追加点を奪えず、1点ほしい状況だ。打席には4番・筒香でタイムリーの期待を持てるところだが、秋山は前の2打席で出塁して相手投手の特徴を把握しており、三盗できるという確信を得た。コーチャーに確認するとGOサインが出て、勝負を仕掛けた。

「国際大会や、いいピッチャーが相手だと単に打つだけでは簡単には点が入らないと思います。クイックのモーションや相手のスキを見てスチールするのは、打席に立って打つよりも、根拠があれば成功する確率が高いと思う。そういうのが使えてくれば、(盗塁がなければ)1塁にいてゲッツーになるところが進塁打になったり、1個ずつ前に進んでホームに帰ってきたりするのはすごく大事だと思います。僕自身、そういう役割をやっていかなくてはいけないと思うので、形になって良かった」

 ダブルスチールを成功させ、1死2、3塁から筒香のファーストゴロ(相手エラー)でリードを2点に広げた。続く中田翔のセンターへの犠牲フライでさらに1点を追加。こうして足や小技を絡めた緻密な野球で得点を奪い、最少リードを守り抜く形こそ、小久保監督は目指すところだとメンバー発表会見の際に明かしている。

田中の引っ張った一打が4得点へ

 続く6回、そうしたパターンで大量点を奪った。先頭打者の平田良介が四球を選び、打席には8番の田中広輔が向かう。

「ランナーが出たので、(最悪1、2塁間の内野ゴロで平田と)入れ替わってもいいなと思って、引っ張ろうと思ったのがいい結果につながったと思います」

 田中は外角高めの140キロストレートを引っ張ってライト前に運び、無死1、2塁とチャンスを拡大。小久保監督は、「しっかり引っ張れる球を待って打つのは、広島でやっている野球だなと感じました」と賛辞を送った。この後、犠打(これを相手が送球エラー)やフィルダースチョイス、筒香のタイムリーなどが重なって4得点。リードを7点に広げ、試合の決着をつけた。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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