大勝の中に見えた侍ジャパンの理想 自分で状況判断して動ける選手の活躍

中島大輔

サブの活躍で“プランB”に目処

自分で状況を判断できて動ける田中は侍ジャパンにとって貴重な存在 【写真は共同】

 この日、「8番・サードで先発した田中は中島卓也の負傷で急遽選ばれ、自身もバックアップメンバーという役割を認識している。だが、ライト前安打を放った前の打席(4回)でも高い野球センスを見せた。1死から平田がライト線に二塁打を放つと、自身の判断でセーフティバントを試みたのだ。

「1点ほしかったところですし、相手ピッチャーの変化球がショートバウンドになるケースも多かったので、ツーアウトでサードに行けばパスボールで1点入るかもしれない。(WBCは)一発勝負なので何が起きるか本当にわからないので、(それを見据えて)先の塁に進めておきたいという気持ちでやりました」

 秋山も「ただ打つだけでは簡単に点が入らない」と言うように、田中のように自分で状況を判断して動ける選手は貴重だ。実際、小久保監督もその働きを評価している。

「基本、坂本のサブということで招集しましたけど、松田(宣浩)の状態によっては(サードの)スタメンがあると言えますね」

 秋山、田中は小技を絡めるプランAを遂行すると同時に、プランBの役割も求められる立場だ。2月25日の福岡ソフトバンク戦からの3試合では選手の状態を上げることに主眼が置かれたが、最悪、レギュラー候補が本番でコンディションを上げられなかった場合も想定しておかなければならない。スタメンをとって代われる駒が求められる。

自分の役割を再認識した秋山

 1日の台湾リーグ選抜戦では、田中はサードの松田、2番で起用された秋山は2日から合流する青木宣親の代わりと想定された。チームの勝利を考えて動ける2人は、いつでも出場できるように準備を整えている。WBC本番ではライトでの先発も予想される秋山は、この日、4番・筒香の打席で三盗を仕掛けた狙いをこう明かした。

「確率の悪いものをただ闇雲にトライすればいいのかというと、時期的にもそんなことが許されるような状況ではないとわかっています。でもやっておかないと、もっと緊張する場面ではもっと固まって、安全に行きたくなる。今日、スタートが切れたところで自分の役割を再認識したところもありますし、あそこで点になり、チームとして形が一つ増えるのはいいことだと思います」

菅野、石川ともに結果を残す投球

 投手陣では先発の菅野智之が、力のあるボールで4回無失点と結果を残した。2番手の石川歩は3回1失点。宝刀のシンカーをWBC公式球でどこまで操れるかが注目されたが、「右バッターに関してはすごく良かったけど、左バッターのシンカーはちょっと抜けていた」。本番に向けての課題は、「(1日は)フルカウントになることも多かったし、四球もあったので、もう少しカウント有利に行ければ、自分の投げたい感じで投げられると思います」と話している。

 福岡で行われた台湾リーグ選抜との連戦が終わり、いよいよ、7日のキューバ戦に向けて残り2試合。2日、大阪に移動し、本番前の最後の仕上げにかかる。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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