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イチローのいない侍ジャパンの“自立”
世界一奪還へ求められるもの

第2回WBC決勝の劇的な8球

世界一奪還を狙う侍ジャパンにとって、精神的な支柱としてのイチロー選出にファンも期待したが…
世界一奪還を狙う侍ジャパンにとって、精神的な支柱としてのイチロー選出にファンも期待したが…【写真は共同】

 あの8球ほど、野球の試合を見ていて、全身に力が入ったことはない。


 2009年の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝。韓国が9回裏に追いつき、試合は延長へ。10回表2死一、三塁の場面で、イチローが打席に入った。


 2球目に一塁走者の岩村明憲がスタートを切って二、三塁となった後、ファウルが4球続き、ボールを挟んでの8球目、イチローの打った打球がセンターへ抜けていくと、思わず腰が浮いた。あの瞬間、やはり多くの人の体が、無意識に動いたはずである。


 ただ、あの劇的な1本があったがため、あのイメージがあまりにも強いがため、ひょっとしたら日本はその後、苦しむことになったのかもしれない。

期待が高かったメジャーリーガーの参加

 ことし2月8日に発表された各国のWBCロースター。日本はすでに代表選手を発表していたが、大リーガーの出場は青木宣親(アストロズ)1人にとどまり、一部で失望の声があった。


 分かっていたことではある。


 昨年11月、ドナルド・トランプ氏が米国の大統領選挙で勝ったような衝撃はない。むしろ予定調和。ただ、前回大会では日本人大リーガーが1人も参加せず、準決勝で敗れた。因果関係を求めるのは酷だが、タイトル奪還の機運と彼らに出場して欲しいという期待感が否が応でも高まり、今回、それなりのメンバーが選出されたにもかかわらず、現実となったときにそれは寂しさにもつながった。


 中でも、第1回大会と第2回大会に出場して代表チームを率いたイチローに関しては、マーリンズのマイケル・ヒル統括本部長が出場を容認する発言をしたことで、ひょっとしたら、という空気があった。前回大会はヤンキースで迎える初めてのキャンプを優先。しかし、今回は役割も固定されており、障害がないとの見方もあった。

ヘルナンデスの腑に落ちない表情

 必然、09年の残像がちらついた。仮にイチローが出るとなれば、最初の2大会はイチローで始まってイチローで終ったところがあるだけに、WBCは単なるWBCではなくなる。普段、野球に興味のない人まで振り向かせることになる。


  ところが……。


 可能性としてはゼロではなかったかもしれないが、残念ながらサプライズはなかった。イチローだけでなく、声が掛かっていた田中将大(ヤンキース)、前田健太(ドジャース)、上原浩治(カブス)らの名前もなかった。それぞれ優先すべき事情があったということになるが、オールスタークラスのメジャーリーガーがこぞって出場するベネズエラ代表のエース、フェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)は、首をひねった。


「イチロー、出ないの? クマ(岩隈久志)も? ダルビッシュ(有)も? 田中も?」


 それぞれの事情を簡単に説明したが、どこまで理解出来たか。腑に落ちない表情は、日本のファンのそれを見ているようだった。

丹羽政善
丹羽政善

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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