93年5月15日 あなたは何をしていましたか シリーズ 証言でつづる「Jリーグ25周年」
Jリーグが「歴史化」していくことへの焦燥感
Jリーグの誕生は、われわれの生活に大きな影響を与えた 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
確かに「Jリーグブーム」ということで考えれば、「1993年5月15日」は一過性のムーブメントと見なされるのも致し方ないところである。しかしここで留意したいのが、バブル崩壊後の「失われた20年」とJリーグの24年がほぼ重なっているという事実である。バブルの時代に比べると、確かにわれわれはぜいたくができなくなったし、未来に対して無邪気に夢見ることはできなくなったし、GDP(国内総生産)も中国に抜かれて世界3位となった。そんな中、バブルの時代には考えられなかったものが、今の私たちの生活にはいくつも存在する。多くの人は「スマホ」や「インターネット」を挙げるだろうが、私はあえてそこに「Jリーグ」を加えたい。Jリーグが開幕したことで、「ポスト・バブル時代」を生きる日本人は(サッカーファンであるなしにかかわらず)、少なからぬ影響を受けているように思えてならないからだ。
当連載が「歴史化」していくJリーグが日本社会に果たした役割について考察する契機となってほしい 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
当企画を進めるにあたり、もうひとつ大きな後押しとなったのが、木之本興三さんの訃報である。当連載でも触れることになろうが、今年1月15日に68歳で亡くなられた木之本さんは間違いなく「Jリーグを作った男」であった。私自身は生前の木之本さんに二度、インタビュー取材をする幸運に恵まれたが、今にして思うと「もっとお話を聞いておけばよかった」という後悔ばかりが先立ってしまう(同じ感情は、今月2日に85歳で亡くなられた元JFA会長の岡野俊一郎さんについても言える)。今後、ますます「歴史化」していくJリーグ。歴史の証言者たちの言葉を拾い集めることで、Jリーグが日本社会に果たした役割について、あらためて考察する契機となれば幸いである。