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羽生結弦が醸し出していた高揚感
敗れてなお「スケートが楽しみに」

ショート後、足が小刻みに震えていた

結果はチェンに及ばず2位。しかし、羽生にとってはレベルアップの手応えをつかむ試合となった
結果はチェンに及ばず2位。しかし、羽生にとってはレベルアップの手応えをつかむ試合となった【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

「順位が1位だったとしても3位だったとしても、僕には追うべきものがたくさんあって、『もっともっと自分はレベルアップできるんだ』とさらに感じられる試合だったと思います」


 1年後に迫った平昌五輪のプレ大会として行われたフィギュアスケートの四大陸選手権・男子シングルは、羽生結弦(ANA)が合計303.71点をマークしながら、17歳の新鋭ネイサン・チェン(米国)に敗れ2位に終わった。ただフリースケーティングの順位は、4回転4本の羽生が1位、4回転を5本跳んだチェンは2位。さらに、「今日のフリープログラムは、すごく挑戦的にやりました」と羽生は振り返っている。5本目の4回転が「視野には入った」という感覚を得ていたのだ。


 3位発進となったショートプログラム終了後、メディアの前に立った羽生の足は、小刻みに震えていた。最初に発した言葉は「いやあ、悔しいです」。いかにも羽生らしいコメントの後に続いたのは、FSに向けて既に前を向いていることを示す言葉だった。


「仕方ないですね。考えてもしょうがないので。(4回転)ループはきれいに決まったので、しっかり開き直って明後日に向けて調整しきれればと思います」


 2つ目のジャンプ、4回転サルコウが2回転になってしまったことが出遅れの原因だった。しかし、今季からプログラムに入れている冒頭の4回転ループは、加点が2.29つく上々の出来栄え。故障明けで少しスローなスタートとなった今季だったが、「しっかり練習したことを出せた」と語ったように、ソチ五輪金メダリストが技術面でなお進歩し続けていることを示す大きな成果だった。


 全米選手権で4種類の4回転を5本入れる驚異的なフリーを滑ったチェンは、この大会のショートでも4回転ルッツ+3回転トウループ、4回転フリップ、トリプルアクセルを成功させ、トップに立った。羽生は、一つ前のグループで滑ったチェンの得点を知らないまま自分の滑走順を迎えたという。


「ブライアン(・オーサーコーチ)が見せないようにしていたので、全然知らずに。6分間練習の前も(点数が)表示されなかったので、『ノーミスしてるんだろうなあ』って思って、やっていました」


 ただ記者会見の最後には、「この(3位という)順番は非常に得意な順番なので、しっかりと自信を持ってやりたい」と逆転への意欲もにじませた。

沢田聡子
1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(シンクロナイズドスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。