アラベスが今シーズン過ごす幸福な時間 バルセロナとの国王杯決勝を待ちわびる

どん底から復活し、1部へ昇格

ペジェグリーノ監督はベニテスのアシスタントコーチとしてリバプールやインテルで経験を積んだ 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 どん底まで落ちたアラベスが再生への第一歩を踏み出したのは、地元ビトリアのバスケットボールクラブ、サスキ・バスコニアの会長を務めるホセアン・ケレヘタがクラブの経営権を手にした11年のことだ。その後クラブはケレヘタが全幅の信頼を置くアベリノ・フェルナンデス・デ・キンコセスを中心に復活を遂げ、13−14シーズンに2部に昇格。15年には倒産法の適用に伴う管財人による経営管理から解放され、とうとう昨季に11年ぶりとなる1部昇格を果たした。

 その後クラブはチームを1部昇格に導いたホセ・ボルダラス前監督との契約を解消し、05−06シーズンにアラベスで現役最後の1年を過ごしたペジェグリーノを招へいした。

 ペジェグリーノは選手として国内外で多くのタイトルを獲得しただけでなく、指導者としてもラファエル・ベニテスのアシスタントコーチとしてリバプールやインテルで経験を積んだ後、監督としてスペインのバレンシア、アルゼンチンのエストゥディアンテスとインデペンディエンテを率いてきた。

 インデペンディエンテは21世紀に入って以降、国内で1タイトル、国外で1タイトルしか獲得できておらず、早急な結果を求められたために志半ばで職を解かれた。だがバスクのクラブをよく知り、選手として、監督としてヨーロッパで経験を積んできた彼は、アラベスの求める監督像にスムーズに適応することができた。

堅固な組織力を武器に快進撃を続ける

アラベスは5月のコパ・デル・レイ決勝でバルセロナに挑戦する 【写真:ロイター/アフロ】

 シンプルかつ勤勉なプレーで躍進を果たしたアラベスだが、昨季からの主力メンバーはGKフェルナンド・パチェコ、ビクトル・ラガルディーア、キコ・フェメニア、マヌ・ガルシア、ガイスカ・トケーロら数えるほどしかいない。

 左サイドバックのテオ・エルナンデスはアトレティコ・マドリー、ボランチのマルコス・ジョレンテはレアル・マドリー、2列目のビクトル・カマラサはレバンテ、前線のルベン・ソブリーノはマンチェスター・シティから期限付き移籍で加入した若手有望株。ベテランDFのアレクシス・ルアーノ、コロンビア代表MFのダニエル・トーレス、天才キッカーのイバイ・ゴメス、ストライカーのクリスティアン・サントスやデイベルソン・シウバらも、やはり今季に加入した新戦力だ。

 彼らは寄せ集め集団とは思えぬ堅固な組織力を武器に、コパ・デル・レイの準決勝でセルタ・デ・ビーゴとの激戦を制した。バルセロナに挑戦する5月の決勝は、今季終了後の取り壊しが決まっているビセンテ・カルデロンで行われるラストマッチとなる可能性がある。

 幸福に満ちた今この時を、アラベスのファンたちがかみ締めるように過ごしているのも当然のことだ。このような時が訪れることを、彼らはずっと待ち続けてきたのだから。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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