アラベスが今シーズン過ごす幸福な時間 バルセロナとの国王杯決勝を待ちわびる

バルセロナには大敗したが……

2月11日のリーグ戦ではバルセロナに大敗したが、アラベスファンが現在浸っている幸福感が薄れることはない 【写真:ロイター/アフロ】

 2月11日(現地時間)のリーグ戦でバルセロナに0−6の大敗を喫したところで、デポルティーボ・アラベスのファンが現在浸っている幸福感が薄れることはなかった。長年2部をさまよい、2009〜13年にかけては3部での戦いまで経験してきた彼らは今、リーガ・エスパニョーラでは降格圏からはほど遠い12位につけながら、5月27日のコパ・デル・レイ(国王杯)決勝が訪れるのを、今か今かと待ちわびている。

 バランスのとれた好チームを作り上げたアラベスのマウリシオ・ペジェグリーノ監督は、現役時代の1998年にバルセロナの新戦力として初めてスペインへやって来た。偶然にもこの年、アラベスが43年ぶりに1部昇格を果たした。しかも同年の前半、つまり97−98シーズンには、2部所属だったにもかかわらず、コパ・デル・レイでレアル・マドリーやデポルティーボ・ラ・コルーニャら強豪を破り、28年、29年以来となる史上3度目の準決勝進出を経験している。

 今季のそれとよく似た当時の快進撃は、今もあらゆる地元ファンの記憶に残っている。だが21年の創立から現在に至るまでのクラブ史において最も輝いた瞬間と言えば、それは00−01シーズンのUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)決勝だろう。リバプールと壮絶な打ち合いを繰り広げた末、延長戦でゴールデンゴールを喫して4−5で敗れたこの一戦は、大会史上最高のファイナルとして語り継がれている。

UEFAカップで歴史に名を残したチームを模範に

アラベスにとって、00−01シーズンのUEFAカップ決勝進出ほど、あらゆる予想を上回った快挙はない 【Getty Images】

 45−46シーズンにコパ・フェデラシオンの優勝経験があるとはいえ、ヨーロッパのコンペティションで果たした決勝進出ほど、あらゆる予想を上回った快挙はない。ホセ・マヌエル・エスナル“マネ”が率いた当時のチームには、ヨハン・クライフの息子ジョルディに加え、同シーズンのリーガで22ゴールを挙げ、スペイン代表入りも果たしたハビ・モレーノ、前シーズンのサモラ賞保持者であるアルゼンチン人GKマルティン・エレーラ、同じくアルゼンチン出身のエルメス・デシオとマウリシオ・アストゥディージョらがいた。彼らはボカ・ジュニオルスに酷似した特製ユニホームを着てあのファイナルを戦い、歴史に名を残した。

 ペジェグリーノ率いる現チームが模範としている当時のアラベスは、前シーズンのリーガで6位に入ってUEFAカップの出場権を獲得した。彼らは2年後の02−03シーズンにも再びヨーロッパの舞台に舞い戻ったが、この時は2回戦で敗退しただけでなく、リーガでも不振に陥り2部に降格してしまう。

 以降、バスク州都ビトリアのクラブは厳しい低迷期を迎えた。クラブを買収したウクライナ系米国人のディミトリ・ピーテルマンのずさんな経営によって深刻な財政難に陥り、07年には破産法の適用を申請。並行してチームも選手獲得から試合の采配まであらゆることに口を出すワンマンオーナーに振り回され、08−09シーズンには3部降格となった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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