小学生に戦術を教えるべきか? スペイン暮らし、日本人指導者の独り言(15)

木村浩嗣

相手に研究されることで戦術は高度化していく

本文中で述べた、「GKからのMFを使ったボール出し」の練習(上)。下はサイドをえぐってのシュート練習の4人参加バージョン。今後はDFを加え難易度を上げていく 【木村浩嗣】

 ただし、日本とスペインでは文化と社会が違う。スペインの子は多分、私の話を60%くらい聞いている。で、残り40%の30%くらいを無秩序なプレーで費やすものの、10%くらいでクリエーティブなプレーをする。これが戦術の強制から出てくる強い個である。

 しかし、日本の子なら私が怒鳴ればその95%くらいは右へ倣えで話を聞くに違いない。残りは5%しかないので個性が出てくる余地がない。もし日本で指導する機会が与えられたら「私の言うことは話半分で聞け。私の意見に反しても、やれると思ったら自分の判断でやれ」と子供たちに言うだろう。同じことをスペインで言ったら、やつらは私の言うことを10%くらいしか聞かなくなって大変だが。

 9月末にスタートした今季の指導で教えた戦術をまとめてみよう。

・GKからのボール出し
・マークの仕方
・前からの、マークをずらしながらのプレス
・CKの守備
・CKの攻撃
・キックオフのセットプレー
・サイドをえぐってのシュートパターン(前回のコラムで書いたもの)
・CKの攻撃時のトリックプレー
・GKからのMFを使ったボール出し

 最後の「GKからのMFを使ったボール出し」(写真参照)というのは、「GKからのボール出し」を発展させたものだ。センターバック(CB)が開いてボールを受けるというパターンが敵に知れ渡ってきて、うちのCBが相手の2トップにマークされ始めたので、その対抗策である。こういうふうに戦術は相手に研究されることで、どんどん高度化していかなくてならない。

戦術が必要な技術を決める

 バルセロナやマンチェスター・シティのGKからのボール出しを見ていると、CBがマークされた時、セルヒオ・ブスケツやフェルナンジーニョが下がってボールを受けてサイドへ展開する。われわれがやりたいのはあれである。が、うちにはブスケツもフェルナンジーニョもいない。どうするか?

 あらかじめ約束事としてMFが出すサイドを決めておけば良い。GKのボールが右側にある時は右のサイドへ展開するので、MFは右向きの半身で下がり、右サイドを視野に入れた状態でパスを出す。ブスケツやフェルナンジーニョは首を振りながら下がり、右か左か一瞬で判断してつなぐのだが、うちのチームではそんなテクニックの持ち主はいないので約束事(戦術)で難易度を下げる。このように戦術によって必要な技術が決まる。

 別の例を挙げよう。サイドではサイドラインを背負って半身になってボールを受けなくてはならない。なぜか? ボールを受けるや否や反転し、前を向いてサイドを駆け上がったり、味方を視野に入れてワンツーをしたりする必要があるからだ。これをうちのチームでは戦術練習の一貫としてやる。

 GKからCB経由でサイドに渡った時点で攻撃のスイッチが入る、という戦術でやっているのだから、サイドの選手は半身でボールをコントロールし反転する技術がなくてはいけない。半身からの反転は、単独に技術練習としてやっても良い。が、それは実戦的ではないし退屈だ。GKからボールを出し、CBまたはMFからのパスを受けたサイドに張った選手が反転しサイドをえぐる、という一連の動きの中でやった方が、そのまま試合に使えるし面白い。

 戦術が必要な技術を決めるから、戦術と技術は切り離せない。だから実戦的な技術を教えるためにも、小学生から戦術を教えるべきだと考えている。

 みなさんはどう思いますか?

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著者プロフィール

元『月刊フットボリスタ』編集長。スペイン・セビージャ在住。1994年に渡西、2006年までサラマンカに滞在。98、99年スペインサッカー連盟公認監督ライセンス(レベル1、2)を取得し8シーズン少年チームを指導。06年8月に帰国し、海外サッカー週刊誌(当時)『footballista』編集長に就任。08年12月に再びスペインへ渡り2015年7月まで“海外在住編集長&特派員”となる。現在はフリー。セビージャ市内のサッカースクールで指導中。著書に17年2月発売の最新刊『footballista主義2』の他、『footballista主義』、訳書に『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』『モウリーニョ vs レアル・マドリー「三年戦争」』『サッカー代理人ジョルジュ・メンデス』『シメオネ超効果』『グアルディオラ総論』(いずれもソル・メディア)がある

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