小学生に戦術を教えるべきか? スペイン暮らし、日本人指導者の独り言(15)
相手に研究されることで戦術は高度化していく
本文中で述べた、「GKからのMFを使ったボール出し」の練習(上)。下はサイドをえぐってのシュート練習の4人参加バージョン。今後はDFを加え難易度を上げていく 【木村浩嗣】
しかし、日本の子なら私が怒鳴ればその95%くらいは右へ倣えで話を聞くに違いない。残りは5%しかないので個性が出てくる余地がない。もし日本で指導する機会が与えられたら「私の言うことは話半分で聞け。私の意見に反しても、やれると思ったら自分の判断でやれ」と子供たちに言うだろう。同じことをスペインで言ったら、やつらは私の言うことを10%くらいしか聞かなくなって大変だが。
9月末にスタートした今季の指導で教えた戦術をまとめてみよう。
・GKからのボール出し
・マークの仕方
・前からの、マークをずらしながらのプレス
・CKの守備
・CKの攻撃
・キックオフのセットプレー
・サイドをえぐってのシュートパターン(前回のコラムで書いたもの)
・CKの攻撃時のトリックプレー
・GKからのMFを使ったボール出し
最後の「GKからのMFを使ったボール出し」(写真参照)というのは、「GKからのボール出し」を発展させたものだ。センターバック(CB)が開いてボールを受けるというパターンが敵に知れ渡ってきて、うちのCBが相手の2トップにマークされ始めたので、その対抗策である。こういうふうに戦術は相手に研究されることで、どんどん高度化していかなくてならない。
戦術が必要な技術を決める
あらかじめ約束事としてMFが出すサイドを決めておけば良い。GKのボールが右側にある時は右のサイドへ展開するので、MFは右向きの半身で下がり、右サイドを視野に入れた状態でパスを出す。ブスケツやフェルナンジーニョは首を振りながら下がり、右か左か一瞬で判断してつなぐのだが、うちのチームではそんなテクニックの持ち主はいないので約束事(戦術)で難易度を下げる。このように戦術によって必要な技術が決まる。
別の例を挙げよう。サイドではサイドラインを背負って半身になってボールを受けなくてはならない。なぜか? ボールを受けるや否や反転し、前を向いてサイドを駆け上がったり、味方を視野に入れてワンツーをしたりする必要があるからだ。これをうちのチームでは戦術練習の一貫としてやる。
GKからCB経由でサイドに渡った時点で攻撃のスイッチが入る、という戦術でやっているのだから、サイドの選手は半身でボールをコントロールし反転する技術がなくてはいけない。半身からの反転は、単独に技術練習としてやっても良い。が、それは実戦的ではないし退屈だ。GKからボールを出し、CBまたはMFからのパスを受けたサイドに張った選手が反転しサイドをえぐる、という一連の動きの中でやった方が、そのまま試合に使えるし面白い。
戦術が必要な技術を決めるから、戦術と技術は切り離せない。だから実戦的な技術を教えるためにも、小学生から戦術を教えるべきだと考えている。
みなさんはどう思いますか?