2年目に臨む金本阪神の目玉・糸井嘉男 若虎の成長を促す“大きな傘”と解釈
糸井獲得で求められる勝利と育成
糸井という大きな傘の下、横田ら若虎たちの成長が期待される 【写真は共同】
一方の糸井はその陽気で個性的なキャラクターも手伝って、良くも悪くも周囲の注目を集めやすい男だ。若手を育成するための雑音避けの傘という役割を考えると、これほど適した人材はいないだろう。今年36歳の糸井が現状のパフォーマンスを何歳まで継続できるかはわからないが、阪神球団には彼が元気なうちに次代の主砲を育成する責務がある。糸井の獲得とは、間接的な意味では若虎育成策のひとつというわけだ。
と、ここまで書いておいて申し訳ないが、本音中の本音を言うと、私の中にはずっとモヤモヤした感情がくすぶっているのだ。なにしろ阪神の外野3人は、この糸井と福留、さらに昨年の新人王・高山俊でほぼ決まった印象がある。しかし、江越大賀や横田慎太郎など、ほかにも期待の若手外野手がまだまだいるため、彼らの出場機会を考えると複雑な気持ちになってしまう。だからといって、福留の急速な衰えや長期離脱、あるいは高山の伸び悩みなども想像したくない。このジレンマは本当に悩ましいところだ。
しかし、糸井が入団した今となっては、もう前向きに解釈するしかないだろう。ここで水を差したところで生産性がないため、こうなったら現状を受け止めて、できるだけポジティブに糸井獲得の意義を導き出したい。それが、この大きな傘ということだ。
今年、糸井にはもちろん活躍してほしい。阪神の勝利に貢献してほしい。ただし、阪神球団としては彼の活躍を短期的な戦力補強に終わらせるのではなく、中長期的な若手育成戦略のための傘としても機能させてほしい。それが勝利と育成の両立なんだと思う。