専攻突撃シャケトラ 日経新春杯 「競馬巴投げ!第137回」1万円馬券勝負
ゴールキーパーはどんな気持ちでいればいいの?
[写真1]カフジプリンス 【写真:乗峯栄一】
「ゴールキーパーというのは、チームにとっては暇な方がいいと思うんですけど、“攻めて来い、シュート打ってこい、全部オレが受け止めてやる”という心構えがいいのか、“いかにしてオレのところにボールが来ないようにするか”を考えるのがいいのか、どっちがいいんでしょうか?」
おぼろげな記憶だが、日本リーグに出ているキーパーは「基本的には守備のかなめとして厚く守ることを考えるが、敵が攻めてきたときは“オレが守る”という意識を強く持つ」みたいな、曖昧なことを答えた記憶がある。
一昨年の秋に「安保法制改定、集団的自衛権容認」という法案が国会を通った。ぼくはこれには反対で、大阪から一人、夜行バスで行き帰りして、国会前デモにも参加した。
しかしそれとは別に、自衛隊員というのは普段はどういう気持ちでいるんだろうと時々思う。基本的には自衛隊というのは暇な方がいい訳だが、「いつでも、どこの国でも攻めて来い、オレが守ってやる」と思っているのか、「いかにして自分たちが暇なように、あるいは訓練だけで済みますように」と考えているのか、どっちなんだろう。
警察官も基本的に暇な方がいい訳だが「犯罪起これ」と考えているのか「暇でありますように」と考えているのか。消防士は「火事起これ」と考えているのか「暇でありますように」と考えているのか。
ぼくはこういうことをよく考える。“専守防衛”の職業というのは案外多い。しかし専守防衛の人が称賛されるためには、何かの災難や悲劇が起こらないといけない。ここに問題がある。
「クソーッ、暇だ。みんな、無用の長物だなどと言いやがる。こうなりゃ、いっぺんこっちから攻めてみてやるか」などと考えないんだろうか?
警察官が犯罪を犯す、消防士が放火をやって自ら火消しに回る(“マッチポンプ”というやつか)、昔、満州の関東軍が自ら爆破事件を起こして「ああ、我が軍隊に対して反攻が起きた」と騒ぐ。これはみな同根なのではないか。ゴールキーパーが「オレが点取ってヒーローになってやる」と考えるようなものではないんだろうか。
競馬場の警備課に連行されたのだが
[写真2]ダコール 【写真:乗峯栄一】
「30人ぐらい集まるかなあ」などと言っていたところ、この南太平洋がどこからか騎手服やヘルメットを調達し、また声の大きさは群を抜いていたから、競馬帰りの客が300人ぐらい集まって大騒ぎになってしまった。申し訳ないことだった。
南太平洋も、けしかけ役の乗峯も当然のごとく警備課に連行されたのだが、知っておいて欲しいのは、競馬場というところ、ここぞというときには緑の制服着たアルバイト警備員ではなく、“私服”の本チャンが出てくるということだ。
南太平洋も乗峯も別の部屋に通され、それぞれ別の“私服”(冬だったが、室内に入っても本チャンの人はトレンチコートを脱がず立ったまま尋問する)が対応する。
そのとき、これはほんとに失礼な想像かもしれないが、この私服の人たちが何か生き生きしているように感じられた。普段、平穏なまま終わる競馬場では、この人たちはたぶん“暇”なのだろう。いや、暇な方がいい。それが競馬場の願いでもあるはずなのだが、この私服の人たちが生き生きするのは、やっぱり「一朝ことあれば」のときなのだ。
それに対して馬券購入者はどうだ。馬券購入者は少なくとも“専守防衛”ではない。専守防衛の人なら、競馬新聞の◎や○の印を見ても心穏やかにしている。「誰々が数百万儲けた」というウワサ話を聞いても持ち場から動かない。
馬券購入者たちは、言ってみれば“専攻突撃”の人間の集まりだ。
こういう人間は、逆にたまには守ってみるべきなのだ。“専守防衛”の人間が「一朝ことあれば」で心沸き立つように、“専攻突撃”の人間はたまに守ってみると心安らぐのだ、きっと。
とはいえ、それは来週からのことでいい。今週だけはシャケトラで攻撃しなさい。