ルイス・エンリケ時代の終焉は近いのか? 日に日に高まるバルセロナ刷新の必要性

国王杯セカンドレグで17年初勝利

ルイス・エンリケ監督が今シーズン限りで退任する可能性があると再び報じられた 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 先週、バルセロナのルイス・エンリケ監督が今シーズン限りで退任する可能性があると話題に上った。

 エンリケの進退問題は以前からたびたび注目されてきたことだ。とはいえ、このタイミングで再燃したのは偶然ではない。実際、その直後に行われた2試合でバルセロナが手にしたネガティブな結果と試合内容は、彼のサイクルがゆっくりと終わりに近づいていることを感じさせるものだった。

 現地時間11日にカンプノウで行われた国王杯4回戦のセカンドレグでは、2017年初勝利を挙げることができた。最多優勝回数を争うアスレティック・ビルバオとの再戦を3−1で制したものの、今のバルセロナは準々決勝進出という結果だけで手放しで喜べる状態にはない。今季を通して薄れつつあるプレースタイルを取り戻すことこそ、彼らの最大の課題だからだ。

 終了間際にリオネル・メッシのシュートがゴールポストに阻まれるなど、2人の退場者を出したビルバオを同点まであと一歩のところまで追い詰めたとはいえ、1−2で敗れたファーストレグ(5日)のバルセロナは良いプレーがほとんど見られなかった。

 本拠地を「エスタディオ・デ・ラ・セラミカ」と改名した8日のビジャレアルとのリーグ戦もそうだ。終了間際にメッシが直接フリーキックを決めたことで敗戦は逃れたものの、やはり内容的には本来のプレーレベルとは程遠い出来だった。

2シーズンにわたり選手補強に失敗

右サイドバックはセルジ・ロベルトがほとんど務めている 【Getty Images】

 一般的に、良い結果さえ出ていれば内容的な問題点やチームの弱点は見えにくくなるものだ。だが逆に、良い結果が出なかった時にはネガティブなイメージが誇張されることもある。

 本コラムでこれまで何度も指摘してきたことだが、現在のバルセロナについてはっきり言えるのは、中心選手たちの動きが悪い時に打開策となるべき有効なシステムや戦術がないことだ。そしてその責任は全て監督にある。

 スター選手たちが万全のコンディションでクリスマス休暇から戻って来なかったことも、この数試合で見られた低調なパフォーマンスの一因だ。前線の選手たちは動きが重く、ディフェンスラインはスピードで振り切られるシーンが目立った。ハビエル・マスチェラーノがニコラ・サンソーネに独走を許したビジャレアル戦の失点シーンはその最もたる例だ。

 この2シーズン、ルイス・エンリケはチームが抱えるいくつもの課題において解決策を見いだせずにいる。中でも最大の問題は前述した通り、チームが危機的状況に陥った際のよりどころとなるべきプレーシステムの欠如だ。選手個々のパフォーマンスに全てを委ねてしまっている現状では、主力選手の何人かが調子を落としたり、今季アンドレス・イニエスタを欠いた時のように、ゲームの組み立てに欠かせない役割を果たす選手がけがに見舞われたりした場合に、チーム全体が受ける影響があまりにも大きすぎる。

 右サイドの守備力を補強できなかったこともルイス・エンリケの失敗の1つだ。ダニエウ・アウベスがユベントスへ去り、アドリアーノ(ベシクタシュ)の移籍も容認したことで、右サイドバックが務まる人材はセルジ・ロベルトとアレイクス・ビダルのみとなってしまった。トップチームで念願の定位置をつかんだのは良かったが、インサイドハーフを本職とするカンテラーノ(下部組織出身選手)はボール扱いに長ける反面、最終ラインでのマンマークを得意としていない。そのため多くのライバルチームは右サイドからファーポストへのクロスやカウンターの機会に、彼の背後のスペースを突くようになっている。

 イバン・ラキティッチが調子を落とし、かつ代役となるべき新戦力たちが軒並み期待に応えられていないことも、中盤のクオリティーの低下につながっている。

 サミュエル・ウムティティやアルダ・トゥランら例外もあるものの、バルセロナはここ2シーズンにわたって多くの補強に失敗してきた。昨季加入したビダル、今季加わったリュカ・ディーニュ、デニス・スアレス、アンドレ・ゴメス、パコ・アルカセルらは皆、既存の中心選手たちほどのレベルは持ち合わせていないことが明らかになっている。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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