SP首位の無良、示した確かな存在感 課題克服に必要な「一番になる気持ち」

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12回目の出場にして初の首位ターン

男子最年長として大会に挑んだ無良崇人が、初めてSP首位発進を果たした 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 ソチ五輪の出場権が懸かった2013年の全日本フィギュアスケート選手権は、有力候補6人がそろった「史上最も過酷な選考会」だった。そこに名を連ねていた無良崇人(洋菓子のヒロタ)は、当時22歳。6人の中では19歳の羽生結弦(ANA)に次ぐ、下から2番目の年齢だった。あれから3年がたち、無良は25歳になった。全日本の出場は今回で12回目となる。自身より年上の高橋大輔、織田信成、小塚崇彦、町田樹はすでに引退した。彼にとって、今大会は初めて最年長で迎える全日本となる。

 過去の最高成績は3位。優勝はおろか2位にも届いていない。そんな彼に千載一遇の機会が訪れた。23日に行われたショートプログラム(SP)で90.34点をマークし、首位スタートを切ったのだ。冒頭の4回転トウループをなんとかこらえて着氷すると、続くトリプルアクセルは高さのあるジャンプで1.86点の加点を得る。3つめのジャンプは3回転ルッツの予定だったが、最初の4回転トウループにつけられなかった3回転トウループを加えて、コンビネーションにするなどリカバリーにも成功した。

「(11月の)フランス杯のSPが頭の中に残っていました。そのときは動き自体は悪くないのに転倒したし、ステップでは動けなくなって、演技が小さくなってしまった。そこからSPは練習を積んできて、ステップなんかは前より1.5倍くらい注意する部分を増やしています。その成果を今回出せたことはうれしく思います」

 ステップはレベル3だったものの、音を刻むような足の動きは観客を魅了した。昨季から改善を図っているステップは徐々に強みとなりつつある。全日本のSPを首位で終えるのは初のこと。24日に行われるフリースケーティング(FS)への期待も高まってくる。

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長年にわたり克服できない課題

 もっとも、彼にとってこの状況は素直に喜べるものではない。そもそも今大会は4連覇中だった羽生がインフルエンザにより欠場。それによって、本命に躍り出た宇野昌磨(中京大)も、4回転フリップでステップアウト、4回転トウループで転倒とミスが続いた。それでも宇野の得点は88.05点と、無良と2.29点しか差がない。ジャンプ1つの成否で簡単に覆る点差だ。

 彼は、こうした状況を冷静に受け止めていた。

「昌磨はステップアウトと転倒があって88点、僕はミスがなくて90点なので、まだまだ及ばない部分があると感じました。でも(前の試合までの)嫌なイメージは払拭(ふっしょく)して全日本をスタートできたので、あとはFS勝負かなと思っています」

 SPとFSの演技を2つ完璧にそろえること。それが長年にわたり克服できない彼の課題だ。もちろん、それはどんなスケーターにとっても簡単にできることではない。しかし、トップを走る選手たちは悪いなりに、きちんと演技をまとめて、点数を出してくる。最高と最低の振り幅は小さい。だからこそ安定した成績を残せる。

 一方、彼はその振り幅が大きい。良いときは世界でもトップクラスの演技を披露するが、悪いときは普通の選手に成り下がる。今季のグランプリシリーズでもその悪癖が顔をのぞかせた。スケートカナダではSPを2位で終えながら、FSで8位まで落ちた。フランス杯ではSP6位から、FSで順位を1つ上げている。やはり2つの演技をしっかりとそろえることができなかった。

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