新時代の到来を感じさせた鹿島の健闘 南米クラブはプレーと運営面の改革が必須

大幅なメンバー入れ替えを強いられる南米勢

コパ・リベルタドーレス終了後にヨーロッパで移籍市場が始まるため、南米クラブは優勝時のチームを12月まで維持することは難しい 【写真:ロイター/アフロ】

 一方、南米側の視点から今大会を振り返ると、今後もクラブ世界一の座を争いたいのであれば、南米フットボール界の現状に対する広範な見直しが必須となる。プレー内容もそうだが、何より必要なのは運営面での改革だ。

 かつてのインターコンチネンタルカップや初期のクラブW杯は、南米のクラブにとって最優先すべき大きな目標であり、タイトル獲得の意欲はヨーロッパのライバルを大きく上回るものだった。それが近年は過密化が進む試合日程や各クラブの経済的な状況により、そうもいかなくなってきている。

 コパ・リベルタドーレスは1年の半ばに決勝を迎える。ヨーロッパではその直後に夏の移籍市場が始まり、選手の輸出国である南米各国では多数の優秀な選手が海を渡っていく。そのため南米王者のクラブはコパ・リベルタドーレス優勝時のチームを12月まで維持することが難しく、主力選手を引き抜かれた後に穴埋めの補強を行い、大幅にメンバーを入れ替えた状態でクラブW杯を迎えることになる。

 対照的に、ヨーロッパ王者となるようなビッグクラブは、CL優勝時のチームをさらに強化して年末の大会を迎えることができる。その差はあまりにも大きく、04年ごろから目に見える形で表れ始め、今や南米王者は決勝に勝ち進むことすらできなくなってしまった。

実験的に導入されたビデオ判定が議論の的に

実験的に導入されたビデオ判定だが、ワンプレーの判断にあれだけ時間をかけていては混乱をもたらすばかりだ 【写真:ロイター/アフロ】

 今大会では実験的に導入されたビデオ判定も議論の的となった。初の適用例となったのは、鹿島対アトレティコ・ナシオナルによる準決勝でハンガリー人のビクトル・カッサイ主審がビデオを確認した末、鹿島にPKを与えた判定だ。このケースはオルランド・ベリオのファウルを受けた西大伍がオフサイドポジションにいたとの指摘もあり、大いに問題視された。

 その是非は別として、鹿島の先制点となったPKが確定するまでの手順は見直す必要がある。ワンプレーの判定にあれほど時間をかけていては、観客に混乱をもたらすばかりだ。それにビデオレフェリーの意見を主審がどこまで取り入れるべきかも、明確な規定を作る必要がある。今回のケースで言えば、ビデオレフェリーは西がファウルを受けたかどうかの判断しかせず、彼がオフサイドポジションにいたかどうかは考慮していなかった。彼がオフサイドであれば、PKを与えるファウルが生じる前にプレーが途切れていたのだから。

 21世紀も17年目を迎える。他の競技では何年も前から人的ミスを減らすべく最新技術が活用されており、フットボールもテクノロジーの導入自体は歓迎すべきである。ただ世界で最も多くの競技者を抱えるこの競技においては、さまざまなバックグラウンドを考慮することも忘れてはならない。

 微妙なプレーが生じるたび、時間をかけてビデオを確認するのは現実的に不可能だ。特に感情的なラテン気質の地域では、判定が確定するまでの空白の時間が長引けば、ろくなことは起こらないだろう。レフェリーはあらゆる形で圧力をかけられるに違いない。1つアイデアを挙げるとすれば、両チームのキャプテンが主審に同行し、共にリプレイ映像を確認することだ。

 テクノロジーの導入は重要な進歩をもたらす可能性を秘めている。だが、今回のような初期段階のテストは、クラブW杯ほど世界的に大きな重要性を持たない、しかし未来につながる経験となるU−17の大会などで行われるべきだったのではないだろうか。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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