タカマツ、負けてさらに強くなる 二人が知る「進化」の楽しさ

楊順行

19歳ペアに再び敗戦「今までの中国ペアと違う」

スーパーシリーズファイナルでは準優勝だった高橋(右)、松友組。松友は「来年につながる大会になった」と振り返った 【Getty Images】

「五輪に近い状態に戻すのは難しいと思った。気持ちと体を休め、来年がんばっていきたい」

 高橋礼華はそう語った。年間12試合あるバドミントンのスーパーシリーズ(SS)。そこでの各種目ランキング上位8位までが集まり、年間王者を決めるのがSSファイナルだ。リオデジャネイロ五輪女子ダブルスで、日本バドミントン界初となる金メダルを獲得した高橋礼華/松友美佐紀(ともに日本ユニシス)は今季、SSでも4勝。世界バドミントン連盟から日本勢初のMVPに選ばれ、世界ランキング1位の第1シードで、2014年以来のSSファイナルの頂点を狙っていた。

 順調に見えた。1次リーグは、失ゲームなしの3連勝で1位通過。準決勝では、五輪決勝で戦ったデンマークのライバル、カミラ・リターユヒル、クリスティナ・ペデルセン組にやはり2−0で快勝した。優勝へ、決勝の相手は中国の陳清晨、賈一凡組。ともに19歳という若いペアだ。1ゲームずつを取り合った第3ゲーム。17−18と追い上げながら、中国ペアのスピードとパワーに押され、「引いてしまった」(松友)と連続失点。五輪決勝で見せた、首の皮一枚からの大逆転はならなかった。

 このペアとは10月のフランスOP・準決勝でも対戦し、やはりファイナルゲームで逆転負けを喫している。高橋はいう。

「プレーが小さくなった。今までの中国ペアと違い、速さで押してくるだけではなく緩急をつけるし、粘りもあります。若いのに、ミスも少なかった」

五輪イヤーの金メダリスト決勝進出は過去1度だけ

決勝では中国の19歳ペアに敗れた 【Getty Images】

 12月の全日本総合では、5回目の優勝を連覇で飾ったタカマツ。「SSファイナルに向けて、自分たちがやろうとしているプレーをどれだけできるか」(松友)を手探りしながらの優勝はさすが金メダリストの貫禄だったが、課題も見えていた。高橋によると、
「五輪のあと、(スケジュールが詰まっていて)まともな練習ができていない。優勝はしましたが、このままではSSファイナルは予選通過も厳しい。私たちにはやっぱり、ある程度の練習量が必要だと再認識したので、できるだけの準備はして大会に臨みたいですね」

 全日本総合決勝からSSファイナルまでは、2週間弱だ。その短期間では、「五輪に近い状態」までは戻らなかったということだろう。日本代表ともなると、年間240日ほどが合宿と海外遠征にあてられる。ただでさえコンディショニングが困難なうえ、五輪イヤーには前後にさまざまなスケジュールがめじろ押しだ。ましてや金メダリストともなれば、セレモニーに取材にと、まとまった練習時間さえとれないほどに忙殺される。

 海外でも、事情は似たようなものなのだろう。五輪イヤーに3回行われたSSファイナル(2008年、12年、16年)で、ちょっと特殊な混合複を除くと、五輪金メダリストの決勝進出は過去に一例しかない。女子ダブルスでは今回のタカマツが初めての決勝進出だから、準優勝とはいえ胸を張っていい。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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