バドミントン、次代を担う「ソノカム」組 全日本総合で連覇 男子代表の看板へ

平野貴也

「国内2番手」からの脱却

男子ダブルスを制した園田啓悟(左)、嘉村健士組。昨年に続き2連覇を飾った 【写真:アフロスポーツ】

 男子もダブルスが盛り上げる! 女子の「タカマツ」だけでなく、男子の「ソノカム」にも注目だ。来季の日本代表選手選考を兼ねた第70回全日本総合バドミントン選手権大会が4日に最終日を迎え、各種目の優勝者が決まった。その中で最も脚光を浴びていたのは、リオデジャネイロ五輪(以下、リオ五輪)の女子ダブルスで金メダリストとなった「タカマツ」こと高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)だが、今大会では新たな展開を迎えた男子のダブルスも注目を集めた。

 2連覇を飾ったのは、リオ五輪まで「国内2番手」の立ち位置に甘んじていた園田啓悟、嘉村健士組(トナミ運輸)。嘉村は「2連覇はうれしい。苦しい時もうれしい時もあった1年」と喜びを語った。大会初戦の3日前には、香港オープンでスーパーシリーズ(※年間12大会行われる世界最高峰のツアー)初優勝を飾り、年間通算ポイントで世界1位となった。12月1日発表の最新世界ランクは、5位。12月には「タカマツ」ペアや女子シングルスの山口茜(再春館製薬所)らとともに各種目の年間成績上位8位が出場するBWFスーパーシリーズ・ファイナルズ(12月14日開幕、ドバイ)に出場することが決まっている。
 今回の全日本総合の決勝戦は、連戦による疲労もあり、相手に2度もマッチポイントを握られる苦しい展開となったが、2−1(21−11、13−21、23−21)で80分超の熱戦を勝ち切った。

世代交代の男子ダブルス

世界に通用する新エースとなるべく、スタイルの見直しを図り、新境地を開いた 【写真:アフロスポーツ】

 男子ダブルスはリオ五輪に出場した早川賢一、遠藤大由組(日本ユニシス)組が長らくエースペアとして君臨していたが、五輪後に早川が代表引退の意向を表明。遠藤は、高卒で今季からチームメートとなった期待の若手ホープ渡辺勇大と新たなペアを結成した。決勝戦は、両ペアの対戦となった。9月の全日本社会人選手権で遠藤、渡辺組に負けている園田、嘉村にとっては、新たに出現したライバルに敗れることなく、日本一の地位を確立させて次期エースとしての台頭をアピールしたいタイミングであり、絶対に負けられない戦いだった。

 日本の次期エースと言っても、早川の代表引退による「繰り上げ」では意味がない。リオ五輪後は課題克服に取り組み、世界に通用する新エースとなるべく、東京五輪を見据えて再スタートを切った。その結果が、現在の勢いにつながっている。
 今夏のリオ五輪出場が絶望的になった頃には、競技をやめたいと思ったと嘉村は言う。しかし、その中で考えを整理しているうちに、スタイルを見直すことに思い当り、新境地を開いた。相手選手をスピードで射抜く低空ドライブの応酬を得意としているが、攻め急いでミスが出ることもあった。攻撃時に前衛となる嘉村は「自分が決めようとし過ぎていた。今は、無理して打たずにゲームメイクをして後衛の園田に打たせるようにしている。今までは、そういう仕事をできていなかった」とショットの精度を高めることで、試合の展開を今までより優位に運ぶことができるようになった。

 副産物も今大会では勝利を呼び込む力となった。力まず、冷静さを保つことで勝負どころを制することができたのだ。ファイナルゲームの19−20の場面では、嘉村がラインぎりぎりに思い切ったスマッシュを打ち込み、20−21で相手が2度目のマッチポイントを迎えたときには、嘉村が笑顔で園田に話しかけた。新しいペアを組んで自信をつけたい相手の方が、タイトルを意識しているはずだと思ったという嘉村は「相手は力んでいるように見えた。こっちは開き直って笑顔でできたので勝ちにつながったと思う」と苦しいときにも相手を見て判断することができていたことを明かした。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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