タカマツ、負けてさらに強くなる 二人が知る「進化」の楽しさ

楊順行

元は「日本の四番手」 脱却への試行錯誤

全日本総合は連覇。練習時間が不足する中で力を発揮した 【写真:アフロスポーツ】

 今年3月17日に返り咲いてから、ずっと世界ランキング1位をキープするタカマツ。一般のファンの方は、リオでの強さが目に焼き付いているだろうが、実は12年のロンドン五輪時点では日本勢の四番手にすぎなかった。むろん出場すらできなかったが、「いい勝負ができていたフジカキ(藤井瑞希、垣岩令佳組)さんたちが、ロンドンで銀メダル。すごいな、と思う半面、悔しさもありました」と松友はいう。

「五輪に出るには、上の3つに勝たなければならない。どうやって先輩たちに勝つか、合宿などで対戦しながら、そこを工夫してきました。私たちは守っているだけでは勝てないので、基本的なレシーブ力になにをプラスアルファすべきかを考えた。(高橋)先輩が前で決めるためのバリエーションだったり、本来守備隊形であるサイド・バイ・サイド(2人が横に並ぶ)からの攻めだったり……」

 自信になったのは、14年のユーバー杯なのだという。すでに世界ランクでは日本勢トップに躍進していたタカマツは、ランキング上位者からガチンコで対戦するこの国別対抗戦で、6戦全勝。日本が敗れた決勝の中国戦でも、勝利で1ポイントを獲得している。高橋はいう。

「第1ダブルスという大役を任され、各国のナンバーワンと当たって準優勝に貢献できたのがいまにつながっています。それまでは、SSの決勝まで行けたとしても、意識しすぎて自分たちの力を出し切ることが少なかったのに、リラックスして自分の力を出す方法が分かったのもこの大会でした」

「新しいスタイルのペアと対戦することが楽しみ」

新たな刺激を受けながら、二人はさらに強くなる 【写真:アフロスポーツ】

 その後、この年6月のヨネックスオープン・ジャパンでSS初優勝を飾ったタカマツは、年末のSSファイナルでも日本勢初制覇を果たすことになる。それ以来、2年ぶりの同大会Vはならなかったが、「来年につながる大会になった」と松友は前を向く。

「五輪が終わって世代交代のタイミングになると、とくに中国などは、強い若手がどんどん出てきます。世界1位で追われる立場という意識よりも、そういう新しいスタイルのペアと対戦することが楽しみ」

 もともと、こう考えるのが松友だ。そういえば中学時代には、中国のジュニアナショナル合宿に40日間参加した。最初のころはボコボコにされながら、帰るころにはなんとか勝負できたことがたまらなく楽しかったという。つまりは、新たなライバルの登場も、さらなる進化への刺激というわけか。

 さあ、東京への助走となる2017年。「どういう巡り合わせか、いい結果が出ない」と2人が口をそろえる世界選手権(8月、スコットランド)でのメダル獲得が、まずは大きな目標になる。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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