【UFC】NY州都でヘビー級大戦争勃発! “ブラック・ビースト”が吹き飛ばす
“ブラック・ビースト”デリック・ルイスがNYで大暴れするか!? 【Zuffa LLC】
UFCウオッチャーにとってオールバニといえばこれまでは、ニューヨーク州でのMMA解禁を働きかけるために、ロンダ・ラウジーやクリス・ワイドマンといったスター選手がニューヨーク州議会に陳情に訪れるなど、ニュースでよく目にする地名であった。したがって、この地でイベントが行われるというのは、マディソン・スクエア・ガーデンを舞台にした「UFC 205」とは違った意味で、時代の変化をより象徴的に感じさせる。そんな「UFCファイトナイト・ニューヨーク」の見どころはズバリ、視察に訪れた州議員の入れ歯も思わず飛び出す、血湧き肉躍るヘビー級大戦争である。
デリック・ルイス、監獄で夢見たオクタゴンの光景
ルイス(31)はかつて3年間、刑務所に入っていた経歴がある。ルイスが19歳の時、36歳のバツイチ女性と関係を持ったところ、これを恨みに思った元夫が銃を持ってルイスを襲いに来たのだという。ルイスは腕力でその元夫を返り討ちにしたが、相手が失明の大けがを負ってしまった。正当防衛という面もあったが、これでルイスは逮捕、投獄された。
監獄の中で、ルイスは出所したあかつきにはプロの格闘家になろうと決心したと明かしている。
「3年間監獄に入っていて、ブルース・バッファー(リングアナウンサー)が自分の名前をコールするところを想像していた。そして今、実際にUFCに出場している。最下層から一気にトップに駆け上ったみたいだ。初めてバッファーにコールされた時には、緊張でガチガチになってしまったよ」とルイスは語る。
そんなルイスのセールスポイントは何といっても相手を粉砕する爆発的なパワーである。プロ16勝のうち実に14試合がノックアウト勝ちなのだ。
「毎試合、俺は対戦相手のことを、俺の子どもの食べ物を取り上げにきたヤツだと思って戦っている。子どものことを思い、家族のことを思い、俺の子どもの頃よりもいい暮らしをさせてやりたいと思っているんだ」というルイスは、自らのことをあくまでも“殴り屋”であると定義づけている。
「俺が見せたいのは酒場のケンカだ。俺は総合格闘家なんていうしゃれたものではない。俺はジャブを出すことすら好きではない。ジャブなんて効きやしない。俺のパンチはすべてが、相手の頭を吹き飛ばすための、体重の乗ったノックアウトパンチなんだ。俺は気持ちと怒りを込めて、思い切り相手を殴る。こんなに気分のいいことはない」
「関節技は大嫌いだ。俺の格闘技人生で最低の瞬間は、かつてローカル団体で戦っていた時に、アームバーで一本勝ちを収めてしまったこと。試合後にそいつは再戦を申し入れてきやがった。俺にノックアウトされたら、再戦したいと思うヤツなどいないんだ。今でも時々、このタイミングで腕を極められるんじゃないか、首を取れるんじゃないかと思うことがあるが、俺はそんなことは見て見ぬふりで、あくまで拳で決着をつけたいと思っている」
「俺は対戦相手よりも強いハートを持っている。これまでもハートの強さで勝ち抜いてきたし、これからも自分のハートを信じて戦っていく。退屈な試合はしない。殺しの本能をむき出しに、ケージですべてを出し切って、やるかやられるかの試合をする。翌朝、こうすれば良かった、ああすべきだったと思いたくないんだ」
こんなルイスとメインイベントで対戦するのは、格闘家を数多く輩出するダゲスタン共和国出身、散打のロシアチャンピオンであるシャミル・アブドゥラヒモフ(35)だ。こちらも独特のタイミングから大振りワンパンチKOを狙うストライカー、クリンチゲームで相手をすり潰すことも大好きだ。閲覧注意になり得る試合を予想させるこの一戦。まばたき厳禁だ。
ホームレスから母国の英雄へ、ガヌーの大冒険
セミを戦うフランシス・ガヌーは、ホームレス状態から母国の英雄への階段を上っている 【Zuffa LLC】
ガヌーの目標はUFCでチャンピオンになることであるが、さらに将来的には母国でボクシングやMMAの指導者になりたいのだという。「チャンピオンになりたいというカメルーンの子どもたちにチャンスを与えたいんだ。だから前回カメルーンに戻った時には、練習器具をいろいろ持ち帰った。ジムを作るための大きな土地も買ったんだ。夢を持って生きていくことはとても難しいけれど、決して無理ではないということを伝えていきたい」とガヌーは語っている。
対するハミルトン(35)はカレッジ・レスリング出身、所属はアルバカーキーの名門ジャクソンズMMAだ。打撃を交えつつ相手に接近し、捕まえてからが本当の勝負というタイプのファイターだったが、7月末に開催された「UFC 201」の前戦ではダミアン・グラボウスキー(ポーランド)に強烈なアッパーカットを食らわせ、わずか14秒でノックアウトしており、打撃の決定力も増してきている。巨体を軽やかに操るポテンシャルの塊のようなガヌーのダイナミックな動きが勝るのか、それともハミルトンの頭脳戦がガヌーの動きを封じ込めるのか、ランキング入りを目指したサバイバル戦から目が離せない。
ジョシュ・サマンが28歳で逝去
UFCファイターとして活躍する一方で、地元フロリダでローカルMMA団体を運営したり、本やコラムを執筆するなどライターとしても才能を発揮、今後のユニークな活動が期待されていた選手だった。追悼の意を表したい。(文:高橋テツヤ)
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ