アメリカズカップ福岡大会は大盛況で幕 アジア初開催にファン1万人以上集結

中山智

総合2位を狙った日本チームだが……

大崩れせずに上位で順位をまとめるレース巧者のランドローバー・BAR(左) 【中山智】

 ソフトバンク・チーム・ジャパンは本番レース初日・第2レースで1位、2日目の第3レースでは2位だったものの、それ以外の4レースは精彩を欠きすべて5位以下。特に初日の第3レースでは、レース中盤まで2位を帆走していたが、ギアトラブルでコードゼロ(前側に上げる三枚目の帆)が使用できなくなり、最下位にまで順位を落とす結果となった。

 さらに、大きくシフトする風にも悩まされる。2日目の1レース目では好スタートで1マークを2位で回航するも、その後のコース選択がシフトした風に合わず、フィニッシュでは5位まで順位を落としてしまった。ここで焦りが出たのか、続く2日目の第2レースでは、スタート時に痛恨のリコール(フライング)。中盤の追い上げもかなわず最下位でのフィニッシュで終わった。

 福岡大会の結果によっては、シリーズ全体の総合成績で2位になるチャンスのあったソフトバンク・チーム・ジャパンだが、福岡での結果は5位。ワールドシリーズも総合5位という成績で全9戦が終了した。

 今大会を制したのはイギリスのランドローバー・BAR。2位は、6レースで2回の1位フィニッシュを獲得し、ポイントではランドローバー・BARと同点になったスウェーデンのアルテミス・レーシングだった。ランドローバー・BARは1位こそ1回だけだが、それ以外のレースを上位で手堅くまとめるレース巧者ぶりを発揮。最終レースでアルテミス・レーシングよりも上位でフィニッシュしていたため、大会規定により優勝の栄冠を手にする結果となった。

総合優勝はランドローバー・BAR

 全9戦を終えたワールドシリーズも総合優勝はランドローバー・BAR。2位は現カップホルダーのオラクル・チーム・USA(米国)となった。

(©2015-16 America’s Cup Event Authority LLC)
■福岡大会成績(6レースのポイント合計)
1位:ランドローバー・BAR(英国)/75ポイント
2位:アルテミス・レーシング(スウェーデン)/75ポイント
3位:オラクル・チーム・USA(米国)/70ポイント
4位:エミレーツ・チーム・ニュージーランド(ニュージーランド)/65ポイント
5位:ソフトバンク・チーム・ジャパン(日本)/61ポイント
6位:グルパマ・チーム・フランス(フランス)/59ポイント

■ワールドシリーズ総合成績(第9戦終了時点)
1位:ランドローバー・BAR(英国)/512ポイント
2位:オラクル・チーム・USA(米国)/493ポイント
3位:エミレーツ・チーム・ニュージーランド(ニュージーランド)/485ポイント
4位:アルテミス・レーシング(スウェーデン)/466ポイント
5位:ソフトバンク・チーム・ジャパン(日本)/460ポイント
6位:グルパマ・チーム・フランス(フランス)/419ポイント

戦いは次のステージへ

レース後、インタビューに答えるディーン・バーカー艇長 【中山智】

 ワールドシリーズが終了し、各チームとも2017年5月末から開催されるルイ・ヴィトン・アメリカズカップ・クオリファイヤーズに照準を合わせていくことになる。クオリファイヤーズから使用艇がこれまでのAC45Fではなく、一回り大きいACC(America's Cup Class)へと変更される。乗員は5名から6名となり、舵のコントロールをスティック型のティラーから、丸形のステアリング・ホイールが採用されるなど、操船方法も大幅に変わる。

 さらにレース形式も、ワールドシリーズでは6艇が同時に帆走するフリートレースだったが、クオリファイヤーズからは1対1のマッチレースとなり、各チームとも新たなレースの戦略・戦術に向けた練習も必要となってくる。

 ソフトバンク・チーム・ジャパンの艇長ディーン・バーカーは福岡大会のレース後「明日は(拠点の)バミューダに戻り、その後はトレーニングプログラムに従ったセーリングをスタートする。同時に、新しい艇の進水に向けて準備していていく。これまでの新艇開発の進展には満足している」と、クオリファイヤーズに向けた対策が着実に進んでいると話している。

 ディーン・バーカーは、アメリカズカップのニュージーランドチームで長年艇長をしており、マッチレースを熟知したトップセーラー。フリートレースよりもマッチレースのほうが実力を発揮できるとも言える。優勝したランドローバー・BARのベン・エインズリー艇長も「優勝はできたが、ワールドシリーズの戦いを通して他のチームも十分な実力を持っていることが分かった」と語っており、クリファイヤーズでも熱い戦いが繰り広げられそうだ。

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著者プロフィール

1974年生まれ。本業はITやモバイル業界をメインに取材・執筆をしているフリーライター。海外取材も多く、気になるイベントはフットワーク軽く出かけるのがモットー。大学在学中はヨット部に所属し、卒業後もコーチとしてセーリング競技に携わっている。アメリカズカップのリポートをとおして、セーリング競技に馴染みのない人たちへヨットの認知度アップを狙っている

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