アメリカズカップで2大会連続の表彰台 レース展開に見るソフトバンクの成長

中山智

舞台はアメリカズカップの故郷

世界最古のスポーツカップである「アメリカズカップ」。165年の歴史を誇る 【中山智】

「ルイ・ヴィトン・アメリカズカップ・ワールドシリーズ」(以下ワールドシリーズ)第7戦が、7月22日から24日までイギリス南部の港町ポーツマスで開催された。ポーツマスでは約1年前にもワールドシリーズ第1戦が行われており、現在発表されているスケジュールでは、唯一同じ場所で複数回開催される大会となっている。

 実はポーツマスは、アメリカズカップ発祥の地ともいえる場所である。イギリスは1851年にロンドン万国博覧会を記念して、ポーツマスの目の前にあるワイト島を1周するヨットレースを企画し、銀の優勝カップを用意した。しかし、このヨットレースにただ1艇だけアメリカから参加した「アメリカ号」が、その他のイギリス艇を引き離して勝利してしまい、優勝カップをアメリカに持ち去ってしまった。それ故にこの優勝カップと、それを獲得するためのレースが「アメリカズカップ」と呼ばれるようになったのだ。

立ちはだかるイギリスの国民的スター

五輪4大会連続金メダルのベン・エインズリー。「サー」の称号も授与されたイギリスの国民的スターだ 【Getty Images】

 日本から参戦しているソフトバンク・チーム・ジャパンは、1年前のこのポーツマスでレースデビュー。チーム発足発表から約3ヵ月と準備にもトレーニングにも時間がない中での参戦で、6チーム中5位という成績だった。デビューから1年が経過したチームの状態を早福和彦総監督は「全体の実力を100%とすると、1年前のポーツマスは30%くらい。現在は60%まで仕上がってきている」と説明。実際に前回大会のシカゴでは3位入賞。チームが拠点を構えるバミューダで行われた練習レースでも勝利しており、成績だけを見てもチームのレベルがアップしていることがわかる。

 そのソフトバンク・チーム・ジャパンに立ちはだかるのが、地元イギリスセーリング界の至宝ベン・エインズリー率いるランドローバー・BARだ。ベン・エインズリーは五輪のセーリング競技においてシドニー、アテネ、北京、ロンドンと4大会連続で金メダルを獲得。同競技歴代最強の金メダリストとも言われており、イギリスではサーの称号も授与されている国民的スターだ。

 さらにランドローバー・BARはチームの本拠地がポーツマスにあり、まさにホームポートでの戦いとなる。セーリング競技ではレース海面の風向や潮流などのクセが分かっているほうが断然有利。1年前の大会でもランドローバー・BARが優勝しており、今大会でも優勝候補の筆頭に挙げられていた。

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著者プロフィール

1974年生まれ。本業はITやモバイル業界をメインに取材・執筆をしているフリーライター。海外取材も多く、気になるイベントはフットワーク軽く出かけるのがモットー。大学在学中はヨット部に所属し、卒業後もコーチとしてセーリング競技に携わっている。アメリカズカップのリポートをとおして、セーリング競技に馴染みのない人たちへヨットの認知度アップを狙っている

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