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自動昇格とプレーオフのはざまで
J2最終節での松本山雅FCの戦い

まれにみる大混戦で迎えたJ2最終節

「まだ何も決まっていない」J2最終節。松本のサポーターは、チャントで選手バスの到着を迎えた
「まだ何も決まっていない」J2最終節。松本のサポーターは、チャントで選手バスの到着を迎えた【宇都宮徹壱】

 最終節になっても、まだ何も決まっていない──。


 11月20日の日曜日14時、J2リーグはシーズン最後となる第42節11試合が、各地で一斉にキックオフを迎えた。例年であれば、すでに優勝チームや降格チームが決まっているものだが、今季は上も下も近年まれに見る接戦となっている。


 まずは残留争いから見てみよう。前節終了時で、自動降格となる22位がツエーゲン金沢、J3の2位との入れ替え戦に回る21位がギラヴァンツ北九州。いずれも勝ち点38で、得失点差で北九州が上回っている状況だ。ただし、20位のFC岐阜が勝ち点40にとどまっているため、まだ自動降格も入れ替え戦出場も決まっていない。ちなみに岐阜は得失点差が−26で最も低く、仮に3チームが勝ち点41で並んだ場合は岐阜が自動降格となる可能性が高い。それぞれの対戦相手は、岐阜がホームで東京ヴェルディ、北九州はアウェーでモンテディオ山形、金沢がアウェーでコンサドーレ札幌となっている(結局、北九州が自動降格、金沢が入れ替え戦に回ることになった)。


 優勝と自動昇格をめぐる争いも熾(し)烈だ。1位の札幌は勝ち点84、2位の清水エスパルスと3位松本山雅FCは勝ち点81で並んでいるが、得失点差では18もの開きがある(清水が+47、松本が+29)。一方、1位の札幌と3位の松本との得失点差はわずかに3。仮に札幌が1点差で敗れ、清水が引き分けか負けに終わり、松本が3点差以上で勝利した場合は、3位の松本が逆転でJ2優勝というドラマティックな展開も考えられる。なお上位3チームのそれぞれの対戦相手は、札幌がホームで金沢、清水がアウェーで徳島ヴォルティス、そして松本がホームで横浜FCとなっている。


 なお上位6位までに与えられるJ1昇格プレーオフ出場チームは、4位のセレッソ大阪(勝ち点75)と5位京都サンガF.C.(同66)が確定。現在6位のファジアーノ岡山(同64)は、FC町田ゼルビア(同62)に抜かれる可能性を残している。ただし町田が6位となったとしても、J1ライセンスを持たないためプレーオフには出場できない。その場合、3位チームは、そのままプレーオフ決勝に進むことになる。岡山はホームでザスパクサツ群馬、町田はアウェーで愛媛FCと対戦。こちらの結果も気になるところだ。


 11試合中7試合が、優勝、自動昇格、プレーオフ進出、そして残留争いが絡む重要な一戦となっている。その中で、私が選んだのが松本平広域公園総合球技場(通称アルウィン)で開催される、松本対横浜FCの一戦だった。

プレーオフに前向きな松本サポーター

今季の松本の躍進を支えた、チーム得点王の高崎寛之。ゴールを決めても淡々としているのが特徴
今季の松本の躍進を支えた、チーム得点王の高崎寛之。ゴールを決めても淡々としているのが特徴【宇都宮徹壱】

 試合当日、キックオフの3時間半前にアルウィンに到着。メディアの受付開始まで時間があったので、スタジアム周辺を散策してみた。まず目を引いたのが、ゴール裏のゲート付近に列を作る、尋常ではない数の松本サポーター。彼らはいずれもシーズンチケットホルダーだが、席順を決める抽選のために早くから並んでいるのである。この日のチケットは早々にソールドアウト。昨シーズンにJ1から降格したことで、平均入場者数が多少は落ち着いた松本だが、それでもサポーターのクラブに対するロイヤリティー(忠誠心)が変わることはない。


 この日、試合後のセレモニーは「優勝した場合」「2位で自動昇格が決まった場合」「プレーオフに回ることが決まった場合」の3パターンが用意されていた。このテンションの高い状況を、松本サポーターはどう受け止めているのだろうか。実は前日の土曜日、私は松本市内の書店で新著の出版記念イベントに出演したのだが、来場していた地元サポーターたちに「プレーオフに回るのも悪くないと思っている人はいますか?」と尋ねてみた。すると驚いたことに、半分くらいが挙手。その理由も「自動昇格とは違った経験がしたい」とか、「アルウィンでさらに2試合見られるから」といった、実にポジティブなものであった(今回のプレーオフは、準決勝も決勝も上位チームのホームで開催される)。


 さて、今季の松本の戦いを簡単に振り返っておこう。今季5年目となる反町康治監督は、1シーズンでのJ1復帰を目指しながら「つなぐサッカー」をチームに浸透させるという、難易度の高い目標設定を掲げた。そのため序盤戦は、連敗こそなかったものの勝てない試合が続き、第6節終了時は16位にまで順位を落とす。しかしその後、チーム戦術が徐々に確立していき、さらに今季より鹿島アントラーズから期限付き移籍してきた高崎寛之がゴールを量産したことで、順位は見る見る上向いてゆく。そして7月24日の第25節、V・ファーレン長崎戦の勝利(1−0)を皮切りに、16試合無敗というクラブ新記録を樹立。第22節以降は、ずっと自動昇格圏内の2位をキープし続けていた。


 しかし前節、町田とのアウェー戦に1−2で敗れると、怒とうの8連勝で猛チャージを続けていた清水についに追い抜かれてしまう。以前、清水を取材した際に小林伸二監督は「プレーオフは何としても避けたい」と語っていたが、まさに指揮官が望んだとおりの展開となりつつある。一方の反町監督、敗戦後の会見で「ヒラリー・クリントンの気持ちがよく分かりました」と冗談めかしに語りながら、チーム内に重圧があったことを率直に認めた。目前の横浜FC戦での勝利を目指しながらも、自動昇格するには他力に頼らざるを得ない状況。14時04分、運命のホイッスルが鳴り響く。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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