Bリーグ開幕で現場に変化はあるのか!? 3人の名将に問う日本バスケの未来 前編

カワサキマサシ

日本バスケが目指すべき方向性

日本人の特徴について「言われたとおりにはできるけれど、リスクを負って思い切ってやるというのは苦手」と天日コーチ 【写真:カワサキマサシ】

 Bリーグは使命のひとつに、「世界に通用する選手やチームの輩出」を掲げている。Bリーグを通じて日本のバスケの競技力を高め、その延長線上に目指すのは日本代表の五輪など世界の舞台での活躍。では、世界と戦うにあたっての日本のバスケの長所はどこにあるのか。そう問うと、3人は一様に答えに窮した。それぞれに考えを絞り出し、「勤勉性にある」というところで意見が一致した。

桶谷HC「もちろん、勤勉さは日本人としての長所だと思うんですけれど……。現状でこれといえるものは、なかなかないですね。もっと世界での経験値のある選手が増えないといけないと思いますし、1対1で仕掛けられる選手が増えないといけない。高さだけじゃなく、フィジカルに関しても、まだまだ。プラスは伸びしろと、このBリーグかな。ここから東京五輪までが、チャンス。Bリーグと東京五輪を有効活用して、東京五輪後の日本代表が強くなっていったら、バスケ界はもっと明るくなるかなと思います」

浜口HC「それ、考えたんですけれどね……。うーん。日本人はコーチの考え方を理解して、コートで表現する能力はすごくあると思います。チームスポーツにおける組織力という意味で、そういう部分は長所かなと思います。技術、スキル面では、ちょっと分からないです。まだまだ、これからというところですね」

天日コーチ「僕らも長所を考えないといけないですね、日本人として。うーん……。チームの約束事を、最後までやろうとするところじゃないですかね。勤勉なところは、いいところだと思います。でもそこに自分の意見や考え方を混ぜて、どう表すかは下手といえば下手。言われたとおりにしかやらないところも、裏表にある。言われたとおりにはできるけれど、自分の判断でチャレンジしないといけないところで、リスクを負って思い切ってやるというのは苦手ですね」

 では逆に、世界と戦うにあたっての日本バスケの短所。これについては、まさに課題山積であると言う。その中から桶谷HCは主に経験を、浜口HCと天日コーチはフィジカル面を挙げた。

桶谷HC「世界のトップレベルと対した経験が、ないに等しいですよね。日本代表の強化は世界を経験させることが必要だと言われますし、そういうところじゃないですかね。日本人は冷静にプレーができれば、スマートなんです。でも当たり合いの中では、そうできない。その場のスキルはすごくあるけれど、試合になって状況判断がともなう場面でのスキル、サッカーでいうとテクニックは低いのかな。試合の中で最適な判断をすることと、それにフィジカルの強さはもっと必要だと思っています」

浜口HC「まずはフィジカル面ですね。単純なサイズ、身長の部分と身体の厚みとか幅とか強さとか。そういう身体の全体的な面は、弱い部分だと思います。Bリーグになって激しいプレーが増えると、フィジカル面も改善が見られるでしょう。そのために、日ごろのトレーニングも意識しないといけませんね。日本バスケットボール協会(JBA)も危機感を覚えていて、NBAにいた佐藤晃一さんというフィジカルの専門家を入れました。そういう人を迎え入れたといこうとは、JBAも現状が変わってくればと考えているのだと思います」

天日コーチ「やっぱり、体つきでしょうね。ウェイトトレーニングをもっと積極的にやらないといけないんじゃないかと思います。ラグビー選手くらいの体にならないとダメじゃないかな。とはいえシーズン中は疲れもありますし、限られた時間の中で練習のバランスをとるのは難しい。でもオフシーズンだったら、週に3〜4回でもウェイトトレーニングをやってもいい。オフシーズンというのは試合がないということで、身体をオフにするという意味じゃないことを、みんなが分らないといけない。オフは次への準備期間なんだと、理解して取り組むことも必要でしょう」

日本のウイークポイント

浜口HC(右)は日本バスケに足りないものとして「人材発掘と育成年代のトレーニング」を挙げた 【素材提供:(C)B.LEAGUE】

 少なくないウイークポイントは努力を継続して消していき、ストロングポイントはこれから作り出さないといけない。そのうえで、日本バスケが世界を目指すために必要なこととは。

桶谷HC「いっぱいありますね(苦笑)。その中でもやっぱり、経験値かな。世界と戦って、世界にチャレンジしていくこと。あと日本人選手が個で打開できる力を磨くことは、すごく大事。現状はそこをチームの外国籍選手に任せている部分が多いので、各チームがそれぞれ意識して、個で打開できる選手を作っていかないといけないかなと思います」

浜口HC「やらないといけないことは数多くあると思いますが、まずは人材発掘と育成年代のトレーニング、指導の部分が最大ではないかなと思います。これから子どもが減っていきますし、いかに良い人材を確保するか。背が高くなる子を他競技にいかせず、バスケをするように人材発掘できるかとか、そういう部分も含めて大切かなと思います。そのためにはBリーグを通じて、バスケをすることが魅力である環境にならないといけないですね」

 3人の中で最年長。スーパーリーグ時代に松下電器を指揮したこともある天日コーチは、興味深い見解を示す。

天日コーチ「まねることだと思います。個人の技術からチームの戦術まで、まねしたらいいんじゃないかな。僕もそうですから。日本独特のバスケをしましょうみたいな、考え方や意見があるじゃないですか。そんなことをやっていたら、試行錯誤ばっかりだと思う。米国には良いコーチがいっぱいいますから、彼らがやっていることの表面だけをなぞるのではなく、とことん真似をしてやるべき。そうやって掘り下げていけば、そのプレーにはこういう意図や本質があったんだって発見があるはずです」

<後編に続く>

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著者プロフィール

大阪府大阪市出身。1990年代から関西で出版社の編集部員と並行してフリーライターとして活動し、現在に至る。現在は関西のスポーツを中心に、取材・執筆活動を行う。

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