イチローの2016年を振り返る――2つの大記録とチームの失速、9月の不幸

丹羽政善

ワシントンD.C.でシーズン終了

2016年のシーズンを終えたイチロー。今季はピート・ローズ超え、メジャー通算3000安打の2つの大記録を達成するも、143試合95安打、打率2割9分1厘の成績だった 【Getty Images Sport】

 何年か前に来たとき、記者席から米国会議事堂が見え、ピッツバーグのPNCパークのように景観を生かして球場を作ったのかと思ったが、そうでもないらしい。このところ、ナショナルズ・パーク周辺の開発が進み、ホテルやコンドミニアムの建設ラッシュ。もはや国会議事堂の屋根がかろうじて視界に残るのみだ。

ナショナルズ・パークからかろうじて見える国会議事堂の屋根 【丹羽政善】

 イチローのメジャー16年目のシーズンは、午後から晴れ間がのぞいたワシントンD.C.で幕を閉じた。

 昨年はフィラデルフィアで最終戦を迎え、8回に登板したことが思い出されるが、昨年客席にはジャケット姿のファンが多かったのに対し、今年は半袖のファンばかり。随分、暖かい。そういえば街路樹の葉も、青々としている。この街に秋の訪れるのはもう少し先か。

 一方でマーリンズには、随分前に秋風が吹いた。

 7月終わりには地区優勝したナショナルズに4ゲーム差まで迫ったこともあったが、8月に入って失速。ジャンカルロ・スタントンの離脱、僅差の勝ちゲームの継投に懸念が出て、その解決の道筋を見つけられないうちに9月に入ると、ワイルドカードでのプレーオフ出場も手の届かないところまでいってしまった。6月、8月とイチローがマイルストーンに達し、あの時期は、チーム状態も良く、華やかだったのとは対照的だった。9月末には、そんなチームに追い打ちをかけるように不幸が襲っている。

6月にローズ超えも興味なし!?

6月15日の第1打席に内野安打でローズに並ぶと、第5打席の二塁打でローズ超えとなる日米通算4257安打を達成した 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 そのことはもう、誰もが知ることだが、この2つの記録を切り取れば、間違いなく2016年のイチローのハイライトだった。まず訪れたのが、日米通算ながら、ピート・ローズの大リーグ通算最多安打記録(4256安打)の更新である。

 6月15日(現地時間)。1打席目に内野安打でローズに並ぶと、最終5打席目にライトへ二塁打を打って超えた。ただあのときイチローは、「ここにゴールを設定したことはないので、実はそんなに大きなことという感じは全くしていない」と、どこか冷めていた。

「今回はピート・ローズが喜んでくれていたら、全然違うんですよ。それは全然(自分の気持ちは)違います。でも、そうじゃないっていうふうに聞いているので、だから僕も興味がないっていうか」

 それでもいくつか興味深い言葉を残している。例えば、ローズのことを、「羨ましい」と言った。

「日本だけでピート・ローズの記録を抜くことが、おそらく一番難しい記録だと思うので、これを誰かにやってほしい。とてつもなく難しいことですけれど。それを見てみたい。だから、日米合せた記録とはいえ、生きている間に見られて、ちょっとうらやましいですね、ピート・ローズのことは。僕も(自分の記録を破られる瞬間を)見てみたいです」

 ただ、自分を抜く選手には条件があり、人格者の中にも存在する特別な選手に超えて欲しいそう。

「狂気に満ちたところがないと、そういうことが出来ない世界でもあると思うので、人格者であったら、出来ないっていうことも言えると思うんですよね。でも、そんな中でも特別な人たちはいるので、ぜひ、そういう人たちに、そういう種類の人たちにこの記録を抜いていって欲しいと思いますよ」

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著者プロフィール

丹羽政善

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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