安美錦が大けがを乗り越え関取残留 “希代の業師”が家族とつかみ取った白星
負傷から約4カ月で強行出場
5月場所2日目、栃ノ心に敗れた際に左アキレス腱を断裂。翌日には手術を受けた 【写真は共同】
「思ったようには動かないけど、相撲を取るのが仕事。少しでも取れると思ったらそこに懸ける。今までもそうしてきた」
果たして、初日の朝弁慶戦は「下がり出してビビってしまった」と電車道で一方的に押し出された。それでも取組後の笑顔交じりの表情からは、黒星による悔しさよりも土俵に上がれる喜びがにじみ出ていた。翌2日目に初白星を挙げるも序盤は1勝3敗と苦しい星勘定。それでも次第に険しくなっていく表情は勝負師そのもの。気力はみじんも衰えていない証拠でもあった。
「今までで一番うれしい勝ち越し」
「ここを目指して来たんで今日は少しだけ喜んで、残り3日を頑張るよ」
相撲人生の窮地に陥りながら“土俵際”で何とか踏みとどまった大ベテランは千秋楽、場所前には考えられなかった勝ち越しを決めた。
「家族でつかみ取った白星かな。今までで一番うれしい勝ち越しだね」と細い目が一層、細くなった。無理がたたり、場所中は患部周辺に痛みを感じながらの土俵だったが、来場所はしっかりケアをして一層の巻き返しを図ってくるだろう。
「早く帰って(妻と)抱き合って喜ぶよ(笑)」
最後は“家庭人”全開の“仕事人”の満面の笑みだった。