東京五輪へ、女子バドは既に競争激化 奥原・山口を追う有望選手たち

平野貴也

“姉超え”を目指す高橋沙

ケガから復帰した高橋沙。昨年2月には世界ランク13位につけていた実力者が、東京へ幸先の良いスタートを切った 【末永裕樹】

 24歳で中堅の高橋沙は、女子ダブルスでリオ五輪の金メダルを獲得した姉・礼華の存在によって注目度が高まった格好だが、昨年2月の段階で世界ランク13位だった実力者。リオ五輪代表の有力候補でもあった。しかし、昨年10月に右ひざの前十字じん帯を部分断裂。リオ五輪出場が絶望的となり現役引退も考えたが「五輪出場の目標を達成しないと、気が済まない。姉を超えたい思いもある」と復帰を決意。照準を2020年東京五輪に移して手術に踏み切った。

 今大会が国際舞台への復帰戦だったが、リハビリ期間に身につけたという粘り強さを発揮。予選を勝ち上がると、本戦1回戦で世界ランク21位の橋本由衣(NTT東日本)に2−0(21−10、21−8)で圧勝。2回戦でも世界ランク13位でロンドン五輪代表の佐藤冴香(ヨネックス)をストレートで破った。準々決勝で対戦した身長180センチ超のスン・ユ(中国)の強打には、まだ完全復調していないフィジカルでは太刀打ちできずにベスト8で敗れたが、復活を印象付ける大会になった。高橋沙は「まだ上から良いショットが打てないこともあるけど、我慢してラリーを長くする練習をしてきた。相手のミスを待つプレーも覚えないといけない。不利になった時に我慢できる選手にならないと勝てない」と、今大会では強打に頼らないゲーム展開でショットの精度を上げて、相手を苦しめた。プレーに幅が出た印象だ。

奥原「誰が勝ってもおかしくない状況」

追われる立場になった奥原だが、競争の激化を歓迎している 【末永裕樹】

 リオ五輪では、21歳の奥原、19歳の山口と若い2人がそれぞれ3位、ベスト8と活躍。東京五輪に向けても2人は有力候補として期待を受けるが、大堀や高橋沙だけでなく、高校生の仁平菜月(富岡高)も2回戦進出を果たすなど、追いかける選手が多くいる。リオの代表組も安泰とは言い切れない競争力がある。

 五輪で個人種目初のメダルを獲得した奥原は、1回戦を終えた後に「4年後は、数ある五輪の中でも東京開催というすごく特別な舞台。みんなで切磋琢磨(せっさたくま)して、女子シングルスだけでなく、5種目すべてでメダルを取れるように刺激し合いながらやっていければいい。1回戦を終えただけだけど、日本代表チームとしては、良いスタートを切れているんじゃないかと思う」と話した。準々決勝で山口に初めて敗れた後には「茜ちゃんだけではなくて、最近の女子シングルスは、常に混戦で誰が勝ってもおかしくない状況」と、追われる立場を自覚しながらも競争激化を歓迎していた。

 選手層の厚い女子シングルスでは、4年後の大舞台でリオを上回る結果を残すためのハイレベルな競争がもう始まっている。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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