女子バド日本人対決、笑顔なき勝利 山口を破った奥原がメダルへ突き進む

平野貴也

勝利後によみがえる葛藤

準々決勝で実現してしまった「日本人対決」を制した奥原がメダルへの挑戦権を得た 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 非情な結果に勝者は涙ぐんだが、こらえた。勝ったからこそやらなければいけないことがある。リオデジャネイロ五輪・バドミントン競技は現地時間16日に女子シングルスの準々決勝を行い、奥原希望(日本ユニシス)が2−1(11−21、21−17、21−10)で山口茜(再春館製薬所)に逆転勝利を収めて日本勢初となる準決勝進出を決めた。あと1勝でメダルに手が届く。

 しかし、勝者に笑顔はなかった。

「茜ちゃんのパフォーマンスは、すごく良くて、この舞台じゃなくてもっと先で戦いたかったという気持ちと、こんなところで喜んでいられないというか……。本当に強かった茜ちゃんの分までしっかりと覚悟を持っていかなきゃいけないなって。ホッとしたとかではなく、何か心の中でキュッと締まったような気持ちでした」

 言葉を探そうとして試合を思い出せば自然と葛藤がよみがえってくる。それを心のどこかで追いやるようにしながら、奥原は言葉を紡いでいた。日本代表のチームメートであり、今大会の遠征もいつものように同部屋だった。奥原が21歳なら、勝山高校を卒業したばかりの山口が19歳と年も近い。仲の良い先輩と後輩の対決は、日本全体が望んでいるよりも早い段階で実現してしまった。

前回五輪の「無気力試合」が同国対決を生む

早期に実現した同国対決は前回五輪からのルール変更が影響していた 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 この背景には、前回ロンドン五輪で起きた「無気力試合」の影響がある。女子ダブルスで中国、韓国、インドネシアのペアが、決勝トーナメントの同国対決や有力ペアとの対峙(たいじ)を避けようとして、成績を調整するためにグループリーグで意図的なミスを重ねて敗れたことが指摘され、失格処分となった問題だ。

 後味の悪かった前回の反省から、今大会は第4シードまでは4つのヤマに振り分けられるが、それ以外の選手はすべてランダムで入る形になったため、早期の同国対決を避けられない仕組みとなった。前回大会の規定であれば、同国の2選手は決勝まで対戦する可能性はなかった。もう一つ、あるいは二つ上の舞台で見たかった日本人対決だが、抽選が行われた時点で明確だったこともあり、準々決勝を勝ち上がった時点で「それぞれがベストパフォーマンスを出してガチンコでぶつかり合えたらいい」(奥原)、「楽しく後悔しないようにやれればいい」(山口)と、嘆くことなく対戦に意欲を示していた。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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