辻沙絵、リオで味わった喜びと悔しさ 陸上転向に未練も、東京でリベンジを

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陸上で初めて味わった挫折

「普通の大会と違うプレッシャーがある」と語った辻。初のパラリンピックでうまく気持ちを整えることができなかった 【Getty Images】

 辻は陸上に専念してからあらためて走りを学び、基礎からトレーニングに励んだ。そして瞬く間に3種目で日本記録を塗り替え、リオパラリンピック代表に選出された。6月に行われたジャパンパラ陸上競技大会では、「自分が頑張った分だけ記録に反映されるので、すごく楽しい」と充実ぶりをうかがわせていた。

 だが、リオでは体が硬くなり、自分らしい走りができなかった。

「普通の大会と違うプレッシャーがあるし、緊張感もある。レースに出れば興奮する部分もあって、他の試合とはまったく違う雰囲気でした。疲労も他の大会よりも大きかったです」

 さらに世界のライバルたちが、序盤から自分をぐんぐんと引き離していく。国内大会では常にトップを走る辻にとって、その見慣れない光景がますます焦りを生んだ。辻はまだ国際大会を1度しか経験したことがない。世界選手権には何も考えずに臨むことができたが、パラリンピックのプレッシャーはその比ではない。緊張、焦りといったメンタルのコントロールは、まだ難しかった。辻は陸上では初めて大きな挫折を経験した。

東京で「もっといいメダルを」

 辻は大好きなハンドボールを自ら諦め、パラ陸上選手としての道を選んだ。だが、その決断にまだ未練を残すようなコメントもしている。

「(転向して良かったと)100パーセントは思っていないです。まだ100パーセント良かったと思えるような結果ではないので。2020年にもっといいメダルを取って、100と200でもメダル争いに絡んで結果を出す。それができて初めて100パーセント(転向して)良かったなって思えると思います」

 ハンドボールに残る未練を払拭(ふっしょく)するためにも、4年後の東京大会に向けては一から自分の走りを鍛え直す。まずは以前から課題に挙げていたスタートしてから体を起き上がらせるまでの姿勢だ。すぐに起き上がろうとしてしまうため、風の抵抗を大きく受ける。飛行機が飛び立つように、低い姿勢のまま起き上がっていく感覚を身に付けるつもりだ。また、コーナーを回る時に体が左右にブレないような、腕の振り方を習得する必要もある。本格的に競技を始めてまだ1年半、伸びしろはまだまだ残されている。

「もっと強くなって、東京では『この選手が見たいから会場に足を運んだ』という存在になっていたいです」

 リオでの経験を糧に、特大のポテンシャルを秘めた辻がさらに飛躍することを期待したい。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)

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