ソフトバンクが初の銀メダル! アメリカズカップ福岡大会へ高まる期待

中山智

最終レースで見せた賭け

第4レースはアルテミス・レーシング(左)に及ばず2位に終わったソフトバンク・チーム・ジャパン(右)。表彰台を懸けた最終レースでは思い切った作戦を取った 【中山智】

 そして迎えた最終第6レース。2日目のレースは得点が倍になることもあり、この最終レースの成績次第では、ソフトバンク・チーム・ジャパンの表彰台の可能性も見えてきた。

 第6レースをリードしたのは、地元グルパマ・チーム・フランス。艇速を維持したままスタートラインをベストタイミングで通過し、第1マークを1位で回航すると、レース終盤までトップで帆走。ソフトバンク・チーム・ジャパンはそれを追い、最終の風上マークを回るまで2位をキープしていた。

 ここからソフトバンク・チーム・ジャパンは賭けに出る。風下へ向かうコースで、先行するグルパマ・チーム・フランスとは別の海面を狙い、離れたコースを選択したのだ。通常セーリング競技では、先行する艇と同じコースを追うのがセオリーとされている。これは風のシフト(向きの変化)や強弱で発生する有利不利の影響を極力少なくするため。実際この風のシフトが、ソフトバンク・チーム・ジャパンが初日総合6位に沈んだ大きな要因だった。

 ディーン・バーカー艇長はこのコース取りについて「競って艇速を落とすよりも、フレッシュな風をつかんで艇速を上げることを選んだ」とレース後に振り返っているが、この選択が正解。グルパマ・チーム・フランスとの差を縮め、最終下マークをトップで回航すると、そのまま1位でフィニッシュ。この第6レースの結果、ソフトバンク・チーム・ジャパンは前日の総合6位から、これまでで最高の総合2位へと逆転した。

好調なソフトバンク、次戦は福岡大会

 総合1位は2日目も好調な走りを見せたアルテミス・レーシングが獲得したが、ソフトバンク・チーム・ジャパンは、初日総合2位の地元グルパマ・チーム・フランスや、ベストメンバーで初日総合3位となっていたエミレーツ・チーム・ニュージーランドをかわしての総合2位。3大会連続の表彰台で、トップチームに迫る成長を見せていると言える。

 大会後、早福総監督は「締まった結果で大会を終えられたので、福岡大会に向けて弾みがついた。福岡では優勝したい」と力強くコメント。大会スタートから1年を過ぎ、全8戦をこなして成長したソフトバンク・チーム・ジャパンが、地元の日本で最高のパフォーマンスを見せられるか。11月18日からの福岡大会が楽しみだ。
■トゥーロン大会成績(6レースのポイント合計)
1位:アルテミス・レーシング(スウェーデン)/76ポイント
2位:ソフトバンク・チーム・ジャパン(日本)/71ポイント
3位:ランドローバー・BAR(イギリス)/70ポイント
4位:グルパマ・チーム・フランス(フランス)/68ポイント
5位:エミレーツ・チーム・ニュージーランド(ニュージーランド)/63ポイント
6位:オラクル・チーム・USA(米国)/57ポイント

■ワールドシリーズ総合成績(第8戦終了時点)
1位:ランドローバー・BAR(イギリス)/437ポイント
2位:オラクル・チーム・USA(米国)/423ポイント
3位:エミレーツ・チーム・ニュージーランド(ニュージーランド)/420ポイント
4位:ソフトバンク・チーム・ジャパン(日本)/399ポイント
5位:アルテミス・レーシング(スウェーデン)/391ポイント
6位:グルパマ・チーム・フランス(フランス)/360ポイント

(協力:ソフトバンク・チーム・ジャパン)

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著者プロフィール

1974年生まれ。本業はITやモバイル業界をメインに取材・執筆をしているフリーライター。海外取材も多く、気になるイベントはフットワーク軽く出かけるのがモットー。大学在学中はヨット部に所属し、卒業後もコーチとしてセーリング競技に携わっている。アメリカズカップのリポートをとおして、セーリング競技に馴染みのない人たちへヨットの認知度アップを狙っている

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