日本陸上界に育つ規格外のスプリンター ウォルシュ・ジュリアンが描く4年後
競技開始から4年でつかんだ五輪出場
400メートル、マイルリレーで予選敗退も、夢を抱かせる大器、ウォルシュ・ジュリアン 【平野貴也】
――まず、今大会の結果と内容を振り返って、どのような感想ですか?
個人種目は、自己ベストを出していれば予選を突破できていたので、悔しいですね。いつもなら最後のカーブでまだ余力があって、ギアチェンジをしてスピードを出せるのですが、カーブを曲がったらもう何も(余力が)なかったです。言い訳をしてはいけないんですが、こっちに来てからちょっと左のくるぶしの辺りを痛めてしまって、直前調整がうまくできませんでした。米国での事前合宿でも熱を出して寝込んでしまったり、調整はもっと気を付けないといけないなと思いました。それでも、リレーの日には復調してきて、個人的にはベストに近い力は出せたと思います。でも、チームとして完全に実力不足でした。
――ウォルシュ選手は、レースとは無関係なケガが多いのが気になっています。
そうなんですよね。高校3年生のとき、モロッコで行われたコンチネンタルカップに出たときも、直前の筋力トレーニングで張り切り過ぎて腰を痛めてしまいましたし、あの頃はバック転の練習をしていてケガをしたり……。いつも何かやってしまうんですよね。
――初めての五輪出場。大会の雰囲気はどのように感じましたか?
当たり前ですけど、関東インカレなどの大会とは比べ物にならないですし、これまでに経験したほかの世界大会とも規模が違います。すべてのスポーツにおいて、最高峰の場なんだなと感じました。こういう場は好きですが、想像を超えていて、会場が何か生きている大きな怪物のように感じました。すごく良い経験になりましたし、次に生かせるというか、もう驚かずにしっかりやれると思うので、それは良かったです。あと、周りの強豪選手はやっぱり迫力があったし、あの舞台であんな走りができるなんて、メンタルが強いなと感じました。
――選手村の様子など、競技以外で刺激を受けた部分はありますか?
選手村でレスリング(女子53キロ級)の吉田沙保里選手を見かけたんですよ。霊長類最強の人じゃないですか。どんな感じの方かなと近付いてみたら、勝てる気がしなかったです。普通に勝てそうにないと思わされるオーラというか、僕の本能が「戦っちゃいけない人」と認識してました(笑)。
海外のいろいろな選手も身近に見られました。食堂に行ったらジャスティン・ガトリン選手(米国、男子100メートル銀メダル)がいて、びっくりしました。ウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)は、建物の前でちょっと見かけた程度でしたけど、ワクワクすることがたくさんあって、ここでの生活は時がたつのが早いなと感じます。コーチたちが、五輪はあっという間に終わるよと言っていましたが、本当にあっという間でした。レースが始まるまでは、とにかく早く走りたいという気持ちでいたのですが。
――出場種目ではありませんが、短距離勢としては4×100メートルリレーが快挙を成し遂げましたね。
自分のレースが終わった後、会場で見ていました。メダルは絶対に取れると思っていましたが、まさか銀メダルとは思わなかったですし、またアジア記録を更新しちゃうし、興奮して「ウワーッ!」と騒いじゃいました。すごくうれしかったです。でも、自分もあの場に立っていれば…、という悔しさも感じたので、その気持ちを次につなげられたらいいなと思っています。