スウェーデン代表が目指す新しい形 堅守からポゼッション重視の戦術に

鈴木肇

欧州選手権優勝の原動力は「堅守」と「チームワーク」

昨年のU−21欧州選手権で優勝を果たしたスウェーデン。その原動力となったのは「堅守」と「チームワーク」だった 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 リオデジャネイロ五輪サッカー日本代表は11日(日本時間)のグループリーグ最終節で、決勝トーナメント進出を懸けてスウェーデン代表と対戦する。往年の名選手ヘンリク・ラーションの息子、ヨーダンを含む52人もの選手が所属クラブの事情などで参加を見送り、戦力的にはベストメンバーには程遠いスウェーデンだが、初戦ではナイジェリアにスコア以上に圧倒されたものの、コロンビア相手には押し気味に試合を進めるなど試合内容は悪くない。昨年のU−21欧州選手権で優勝し、1992年バルセロナ大会以来の五輪出場を決めた北欧の古豪はどんなチームなのか。ホーカン・エリクソン監督の人物像などをもとにひも解いていきたい。

 U−21欧州選手権で頂点に立った原動力となったのが、「堅守」と「チームワーク」だ。今夏のEURO(欧州選手権)2016で記憶に新しいアイスランド代表を率いたスウェーデン人指揮官ラーシュ・ラーゲルベックは、「このチームの最大の強みはディフェンス。選手全員がチームのためにハードワークしている」と分析。バルセロナ五輪に出場したスウェーデンを代表する名選手トマス・ブロリン氏は「団結とはどうあるべきかを若きスウェーデン代表は示してくれた」とチームを高く評価した。

 こうした特長は、誰よりも現場がよく理解していた。エリクソン監督はU−21欧州選手権の登録メンバーを発表した後、「大会で勝ち進むためのカギは『古き良きスウェーデン』。つまり、規律と組織を保って、チームのためにハードワークすることだ」とコメントした。優勝の立役者となったMFオスカル・レビツキは、ヨーロッパ予選で連敗した後、チームの方向性について「われわれがスペインになることは決してないし、ドイツのように8000万人の中から選ぶこともできない(※スウェーデンの人口は約988万人)。自分たちの長所、つまり組織的なディフェンスに目を向けなければならない」と語った。

五輪へ向け掲げたのはポゼッション重視のサッカー

 だが、リオ五輪におけるスウェーデンのスタイルはU−21欧州選手権時のそれとは異なる。手倉森ジャパンのテーマが「耐えて勝つサッカー」なら、エリクソン監督率いるスウェーデンのテーマは「ボールを支配するサッカー」だ。

 エリクソン監督は大会前、「ボールポゼッションで相手を上回り、試合を支配するサッカーをしたい」と抱負を語った。これは、現地ブラジルの高温多湿という状況下では自分たちがハードワークするよりも、できるだけ長い時間ボールをキープして相手を走らせるほうが効率的だからだと言われている。

 とはいえ、このテーマを知ったとき、スウェーデンのジャーナリストはもちろん、筆者自身も耳を疑った。この国の伝統である堅守速攻にそぐわないことはもちろん、エリクソン監督のスタイルとも180度異なる。何より、U−21欧州選手権では出場8カ国のなかでボール支配率がもっとも低かったのがスウェーデンだった。大手夕刊紙『アフトンブラデット』は「大それた目標設定」「五輪で優勝するよりも難しい」と報じた。

 一方で違った見方もある。夕刊紙『エクスプレッセン』のマーリン・ヨンソン氏は、無謀に思えるこの目標について、「選手たちに自信を持たせるために設定したのではないか」と意見を述べ、エリクソン監督を「優れた心理学者」と形容した。この意見に筆者も同意する。

コロンビア戦は満足のいく結果に

コロンビア戦はボール支配率も相手を上回り、格上相手に試合を優位に進めた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 冒頭で触れたとおり、スウェーデンは50人以上の選手が五輪参加を辞退した。U−21欧州選手権優勝メンバーで五輪出場資格もあった14人の内、選ばれたのは半数の7人だった。チームを構築する時間はあまりなく、選手たちの間でメンタル面の不安があったとしても不思議ではない。そこでエリクソン監督は、「ボール(試合)を支配する」という実に分かりやすい目標を掲げることで、選手の士気を高めようとしたのではないだろうか。MFムアメル・タンコビッチはグループリーグ初戦の前日、「ボールを支配する攻撃的なサッカーを見せる。このチームのプレースタイルにたくさんの人が驚くことになるだろう。われわれは自分たちのことを信じているし、何ができるか分かっている」と語った。

 それでは、実際のところグループリーグ2試合の内容はどうだったのか。0−1というスコア以上の完敗だったナイジェリア戦では終始劣勢だった。だが、選手が異口同音に「勝ち点3を逃した」と悔やんだコロンビア戦のボール支配率は53対47で優勢だった。

 オーバーエイジ枠で招集された主将アストリト・アイダレビッチはコロンビア戦後、「われわれはボールを支配するサッカー、つまり従来のスウェーデン代表とは異なるサッカーをすると言ってきた。そしてコロンビアとの試合でそれを実行できた」とコメント。エリクソン監督も「スウェーデンのチームが国際的に知られた国を相手にパスサッカーを披露できた。とても誇りに思う」と選手たちをたたえた。格上相手に試合を優位に進めたことももちろん、目標を達成できたことに満足しただろう。

1/2ページ

著者プロフィール

1978年生まれ。埼玉県出身。1994年米国W杯で3位入賞したスウェーデン代表に興味を持ち、2002年日韓W杯ではデンマーク代表の虜になり、スカンジナビアのサッカーに目覚める。好きな選手はイェスペア・グロンケア。自身のブログ(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/swe1707/)でスカンジナビアのサッカー情報を配信中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント