スウェーデン代表が目指す新しい形 堅守からポゼッション重視の戦術に
欧州選手権優勝の原動力は「堅守」と「チームワーク」
昨年のU−21欧州選手権で優勝を果たしたスウェーデン。その原動力となったのは「堅守」と「チームワーク」だった 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】
U−21欧州選手権で頂点に立った原動力となったのが、「堅守」と「チームワーク」だ。今夏のEURO(欧州選手権)2016で記憶に新しいアイスランド代表を率いたスウェーデン人指揮官ラーシュ・ラーゲルベックは、「このチームの最大の強みはディフェンス。選手全員がチームのためにハードワークしている」と分析。バルセロナ五輪に出場したスウェーデンを代表する名選手トマス・ブロリン氏は「団結とはどうあるべきかを若きスウェーデン代表は示してくれた」とチームを高く評価した。
こうした特長は、誰よりも現場がよく理解していた。エリクソン監督はU−21欧州選手権の登録メンバーを発表した後、「大会で勝ち進むためのカギは『古き良きスウェーデン』。つまり、規律と組織を保って、チームのためにハードワークすることだ」とコメントした。優勝の立役者となったMFオスカル・レビツキは、ヨーロッパ予選で連敗した後、チームの方向性について「われわれがスペインになることは決してないし、ドイツのように8000万人の中から選ぶこともできない(※スウェーデンの人口は約988万人)。自分たちの長所、つまり組織的なディフェンスに目を向けなければならない」と語った。
五輪へ向け掲げたのはポゼッション重視のサッカー
エリクソン監督は大会前、「ボールポゼッションで相手を上回り、試合を支配するサッカーをしたい」と抱負を語った。これは、現地ブラジルの高温多湿という状況下では自分たちがハードワークするよりも、できるだけ長い時間ボールをキープして相手を走らせるほうが効率的だからだと言われている。
とはいえ、このテーマを知ったとき、スウェーデンのジャーナリストはもちろん、筆者自身も耳を疑った。この国の伝統である堅守速攻にそぐわないことはもちろん、エリクソン監督のスタイルとも180度異なる。何より、U−21欧州選手権では出場8カ国のなかでボール支配率がもっとも低かったのがスウェーデンだった。大手夕刊紙『アフトンブラデット』は「大それた目標設定」「五輪で優勝するよりも難しい」と報じた。
一方で違った見方もある。夕刊紙『エクスプレッセン』のマーリン・ヨンソン氏は、無謀に思えるこの目標について、「選手たちに自信を持たせるために設定したのではないか」と意見を述べ、エリクソン監督を「優れた心理学者」と形容した。この意見に筆者も同意する。
コロンビア戦は満足のいく結果に
コロンビア戦はボール支配率も相手を上回り、格上相手に試合を優位に進めた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
それでは、実際のところグループリーグ2試合の内容はどうだったのか。0−1というスコア以上の完敗だったナイジェリア戦では終始劣勢だった。だが、選手が異口同音に「勝ち点3を逃した」と悔やんだコロンビア戦のボール支配率は53対47で優勢だった。
オーバーエイジ枠で招集された主将アストリト・アイダレビッチはコロンビア戦後、「われわれはボールを支配するサッカー、つまり従来のスウェーデン代表とは異なるサッカーをすると言ってきた。そしてコロンビアとの試合でそれを実行できた」とコメント。エリクソン監督も「スウェーデンのチームが国際的に知られた国を相手にパスサッカーを披露できた。とても誇りに思う」と選手たちをたたえた。格上相手に試合を優位に進めたことももちろん、目標を達成できたことに満足しただろう。