アメリカズカップで2大会連続の表彰台 レース展開に見るソフトバンクの成長

中山智

艇長ディーン・バーカーの粘り強いセーリング

ゲート回航時もミスが減り、順位を落とすことなく抜けられるようになってきたソフトバンク・チーム・ジャパン 【中山智】

 7月22日は6チーム参加のトライアル(練習)レースが4つ行われ、公式な成績ではないが、下馬評どおりにランドローバー・BARがトップ。ソフトバンク・チーム・ジャパンは第1レースが3位、第2レースでは4位だったが、第3レースでは1位、第4レースでは2位と調子を上げ、総合ではランドローバー・BARに続く2位に入った。

 7月23日の本番レース初日は青空が広がり、秒速3〜5メートルほどの軽風の中でレースを開催。3レースが行われたが、ソフトバンク・チーム・ジャパンはその3レースすべてでスタートに出遅れる、あるいはスタート時刻前にラインを切ってしまうというミスをしてしまう。

 しかし、艇長のディーン・バーカーは、そのミスをカバーする粘り強いセーリングで第1レースを4位、第2、第3レースは3位と手堅く順位をキープ。特に第3レースでは平均速度や最大速度は他チームとほぼ同じながら、最も帆走距離が短く方向転換も少なめという効率の良いセーリングを披露。初日を終えて、ソフトバンク・チーム・ジャパンは総合3位。トップは予想どおりランドローバー・BARだが、2位は同点でグルパマ・チーム・フランス。トップとの点差は3点と僅差で、2日目のレース結果によっては十分優勝を狙える順位だ。

ランドローバーとオラクルによるトップ争い

6レース中3レースで1位、2レースで2位と抜群の成績を収めたランドローバー・BAR 【中山智】

 第3レース後にディーン・バーカーは「以前はボートハンドリングでミスをすることが多く、良いスタートを切っても順位を下げてしまうことがあったが、ミスが減ったことでチーム本来の力が発揮できるようになってきた」と語っており、上位陣との実力差が埋まり、ディーンが理想とするセーリングにチームとして完成しつつあることがうかがえるレースとなった。

 本番レース2日目は、前日よりも風速が上がり、フォイリング(翼走)できるAC45F(ワールドシリーズで採用されている艇種)としては絶好のコンディション。優勝を狙うソフトバンク・チーム・ジャパンは、前日同様実力を発揮してミスの少ないセーリングを見せていたが、それ以上に強さを見せつけたのが、ランドローバー・BARと、現在カップを所持しているチャンピオン艇のオラクル・チーム・USAだった。

この2艇が激しいトップ争いをし、全3レースの1位と2位をこの2艇で独占。本番レース2日目のレースは得点が倍になることもあり、第5レース終了時点でソフトバンク・チーム・ジャパンの優勝はかなり難しい状況となった。しかし3位の表彰台を狙うには、第5レースを終えて4位につけているエミレーツ・チーム・ニュージーランドに先着すればオーケーな状況に。

 そこで最終の第6レースはエミレーツ・チーム・ニュージーランドを意識したレース運びとなり、両チーム抜きつ抜かれつの展開に持ち込まれた。ソフトバンク・チーム・ジャパンは最終ゲートでエミレーツ・チーム・ニュージーランドが回航する内側をつき逆転に成功すると、そのままフィニッシュラインを通過し第6レースは3位を獲得。狙いどおり総合でも3位と、2戦連続での表彰台となった。
 

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著者プロフィール

1974年生まれ。本業はITやモバイル業界をメインに取材・執筆をしているフリーライター。海外取材も多く、気になるイベントはフットワーク軽く出かけるのがモットー。大学在学中はヨット部に所属し、卒業後もコーチとしてセーリング競技に携わっている。アメリカズカップのリポートをとおして、セーリング競技に馴染みのない人たちへヨットの認知度アップを狙っている

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