地元に戻ってきたロアッソ熊本 逆境からのミラクルよりも大事な約束
厳しい状況の中で持ち直し12位に
地震の影響で他チームより3〜4試合少ないうえ、さまざまなハンデを背負いながらも暫定12位につけている熊本 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
首位に立っているのは、熊本との前期対戦を残しながら20試合で14勝3分け3敗の北海道コンサドーレ札幌。2位は第21節で熊本を5−1と下したセレッソ大阪で、以下9位のジェフ千葉までが21試合を消化。10位の愛媛FCと11位のモンテディオ山形が札幌と同じように熊本との前期対戦が済んでいないため消化試合は20試合となっている。山形戦で引き分け以下でも熊本の順位は変わらないが、仮に勝って勝ち点3を加えた場合、山形と愛媛を抜いて暫定10位に浮上する。
4月に起きた熊本地震の影響で他チームより3〜4試合少ない状態でのこの成績は、1カ月もリーグ戦から離れていたことや、地元で試合が開催できないためにホームゲームが代替地での開催となり、毎週のように関東や関西への長距離移動を余儀なくされたこと、さらに先週水曜の第8節京都サンガF.C.戦から延期となっていたゲームがウィークデーに組み込まれて、これから先も短い期間での連戦に臨まなければならないことなどを踏まえれば驚異的だ。
もっとも、直近のC大阪戦では退場者が出たこともあって5失点と大敗し、暑さを増す夏にかけて連戦の影響、つまり疲労も出てくると思われる。しかしリーグ戦に復帰した直後は4連敗を喫し、中断前から合わせると6連敗と長いトンネルに入っていた状況からすれば、厳しい状況の中でよくここまで持ち直して勝ち点を重ね、順位を上げてきたものだと思う。
背負いすぎていた思いや使命感
リーグ戦復帰後、チームは「勝って、地元に元気を届けなければ」という思いや使命感を背負いすぎていた 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
「今回、自然災害ですけれどああいう大きな地震があって、何て言うんですかね、『何か起きるんじゃないか』って思っていたところも……、少しあるんです。勝手に自分たちに力が湧いてきて、リーグ復帰戦から連勝していくミラクルが起きるような」
例えば1995年の阪神・淡路大震災のあとのプロ野球パシフィック・リーグのオリックス・ブルーウェーブ(当時)や、2011年の東日本大震災のあとのベガルタ仙台のように、被災地をホームタウンとするプロチームが震災後に好成績を収めた例は確かにあった。
「でも」と、岡本は続けた。「そんなに甘くはなかったし、『うまくいく』と思っているだけじゃ、やっぱりうまくいかない。しっかり戦わないと勝てない時期がまた来るっていうのを、リーグ戦に復帰してからあらためて気づけたのかなと思います」
千葉、水戸ホーリーホック、FC町田ゼルビア、ファジアーノ岡山と、1カ月ぶりにリーグ戦に復帰した熊本は4連敗。現実の厳しさとともに、「勝って、地元に元気を届けなければ」という思いや使命感を背負いすぎていたのだ。
「ひとりひとりはすごく頑張っているんですけれど、頑張ろうという気持ちが先走ってしまいチームになってこなくて、コンビネーションとか、いろいろなものが合わなかった」
震災後初めての九州でのゲームとなった第17節のツエーゲン金沢戦(@ベストアメニティスタジアム)で5−2とリーグ戦復帰後初勝利を挙げた後、それまでになかなか結果が出なかった要因を問われた清川浩行監督はそう述べている。
5戦無敗を実現した背景
鳥栖で行われた金沢戦(写真)を皮切りに、5試合無敗で勝ち点を積み、順位を上げてきた 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
この間、清川監督はオーソドックスな4−4−2に加えて、3バックの布陣を状況に応じて使い分けてきた。第20節FC岐阜戦以降の5連戦では、疲労からの回復度合いも考慮して、前の試合から半分近くの先発を入れ替えるという手法も採っている。
「ピッチ外も含めていろいろな経験をしましたし、システムが違ったり本来のポジションでないところでプレーしても、ゲームの中で選手ひとりひとりが役割を理解して、考えることができるようになったと思います。そういう中で勝ち点を積み上げてきて、自信になっているところもある。メンタルが強くなったというより、落ち着けるようになったという方が近いかもしれません」(清川監督)。