ボンズも謎!? イチロー好調の要因は? データから見えるバッティングの変化

丹羽政善

ポイントはヤンキースとのオープン戦

4月、マイアミでのヤンキースとのオープン戦でセカンドゴロに倒れたイチロー。本人はこの試合で何かつかんだものがあるという 【写真は共同】

「オイ、イチ! 何を見つけたんだ?」

 打撃練習に向かうため、バットを手にダグアウトから出て来たイチローにバリー・ボンズ打撃コーチが、声をかけた。

 振り向いたイチローは、そのまま顔に笑みを浮かべたまま去っていく。

「聞いといてやるよ」

 ボンズもそういって、バッティングケージの方向へ歩き始めた。

 イチローが、日米通算ながらピート・ローズの大リーグ通算安打記録を更新した日のこと。好調な理由を不意に語り始めた。

「キャンプ中は(手応えが)なかった。キャンプ終ってから、マイアミに戻ってヤンキースと試合をしました。あそこはポイントだった」

 マーリンズは4月2日(現地時間)、オープン戦の仕上げを本拠地マーリンズ・パークにヤンキースを迎えて行った。イチローは初戦、初球を打ってセカンドゴロ。2試合目はショートフライとレフトフライだった。ただ、今季、好調のルーツがその3打席にあるという。

 何がどうポイントなのか。

 イチローは聞かれる前に、「その先はご容赦願います。願いたいと思います、かな」と機先を制したが、当然気になる。

ボンズ「何も気付かなかった」

 ならばと数日後、打撃コーチのところへ行って、気づいたことはないかと聞いたわけだが、ボンズは初耳だとでも言わんばかり。

「そんなことがあったのか?」

 そんなやり取りをしているすぐ横をイチローが通り過ぎたとき、「オイ、イチ! 何を見つけたんだ?」とボンズが声を掛けたわけだが、ボンズは「何も気付かなかった」と正直に話した。

 以来、ボンズと話す機会がないので、イチローに聞いて判明したのかどうかも分からないが、ある選手がこう言っていた。

「ちょっとした、感覚的なことじゃないかな」

 その選手とは投手だが、同じようなことがあると言う。

「説明が難しいけれど、あっ、これかな、と感じるときがある。それは理屈じゃない。チェンジアップを投げる感覚を掴んだ時がそうだった。ちょっとしたことで、これだ、というものが見つかるときがある」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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