これぞ“手倉森ジャパン”のゲーム展開 2年半の積み重ねを示した松本の夜
再編成のときを迎える“手倉森ジャパン”
リオ五輪前に行われる国内ラストマッチでU−23南アフリカに快勝したU−23日本代表 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
リオ五輪前に行われる国内ラストマッチと位置づけられたこの試合は、メンバー発表前の最終選考試合でもあった。同時に2014年1月から2年半に渡って活動してきた「1993年生まれ以降の選手で構成されたチーム」としての最終戦でもあった。このゲームを最後に、チームはオーバーエイジの3選手を加える形で再編成のときを迎えるからだ。
そんな大切な一戦を前にして手倉森誠監督は「彼らのこれまでの成長とこれからの可能性というのを存分に示してもらいたい」と語っていたのだが、少なくとも「これまで」を色濃く感じさせるゲームになったのは間違いない。
勝負を分けた15分間のフルスロットル
立ち上がりは南アフリカに主導権を握られたものの、日本は失点以降の15分で圧巻の攻勢を見せた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
だが、この程度で心が折れることはない。否、折れなくなったと言うべきか。MF大島僚太は「後ろから植田(直通)がすごく声を出してくれました。失点したあとに『後ろは任せてくれればいいから、どんどん前から取りにいこう』と言ってくれた」と振り返ったが、失点後のチームに漂う雰囲気は、劣勢でも前を向けるチームメンタリティーが養われていることをよく象徴していたように思う。先制して心理的に緩んだ相手に対し、日本の若き選手たちは静かにアクセルを踏み込んでいった。
失点以降の15分は圧巻の攻勢となった。マンツーマンで対応する意識の強い相手に対して、オフ・ザ・ボールの動き出しで釣り出し、空いたスペースを突いていく。連動性と連続性が伴う攻めは、37分にまず同点ゴールを生み出す。矢島のスルーパスから抜け出したのはボランチの大島。ダイナミックな飛び出しでマーカーを置き去りにするプレーは、大島の2年半での確かな成長を感じさせるもので、そこから丁寧に出した優しいラストパスは彼らしさの象徴だった。合わせたのは、チーム内得点王ながら負傷で五輪出場が危ぶまれていた中島翔哉。「大島くんは優しい人だから来ると思っていた」と言うボールを押し込んで、復活を印象づけた。
続く44分にも矢島が魅せる。右サイドのスペースに室屋を走らせるパスから、ダイレクトの折り返しをペナルティーエリア内で受けるワンツーリターン。正確に右足でミートしたシュートがゴールネットを揺らし、日本が瞬く間に逆転に成功する。さらにアディショナルタイムには、相手のビルドアップでのスキを読み切っていた浅野がボールを奪い取って、中島の2点目をアシスト。あっという間に試合の様相はひっくり返った。試合を通じて日本がボール支配率で上回った時間帯は、この前半ラスト15分のみである。そしてその15分間のフルスロットルで勝負はついた。
そして後半の頭(3分)には植田のロングフィードから抜け出した浅野が決めて4点目。A代表のキリンカップではチャンスで遠慮してパスを選択したストライカーが、今度は迷わずシュートを選択し、4点目のゴールを奪い取った。ごく短い期間ながら、確かな成長を裏付ける一コマ。この大量リードを受けて残る時間はテストに徹した日本が4−1のまま圧勝。国内最後の試合を白星で飾った。