8cm劇勝マカヒキ“史上最高”ダービー馬 秋は凱旋門賞も視野「十分チャンス」

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「スムーズに取った」中団の位置取り

皐月賞から一転、中団から鋭く脚を伸ばしたマカヒキ(右・黒帽)、サトノダイヤモンドとの一騎打ちとなった 【中原義史】

「ずっと考えていた位置取りと言うよりも、スムーズに競馬ができればあのくらいの位置に行けると思っていました。ゲートも上手に出るようになって、枠も良かったのである程度の位置を取りに行こうと思っていましたが、無理もしていませんし、スムーズに取った位置取りがあそこでした」

 レースを振り返ってみよう。マカヒキのダービーでのポジションはちょうど中団。ほぼ最後方から直線一気の競馬を見せた弥生賞、皐月賞の印象が強すぎるだけで、マカヒキ自身、「一番の良さは賢さ。レースでは無駄なことをしないで、素晴らしい能力をしっかり発揮してくれる」と川田が評するように、気性面からも競馬が難しいタイプではない。ゲートさえ普通に出ればスマートな競馬ができる馬だ。

「皐月賞の2着は悔しいと言うよりも、申し訳ない思いでいっぱいでした。ですから、何としてでもダービーは結果を出したかったんです。パドックから返し馬まですごく落ち着いていましたし、キャンターに下ろした感じも皐月賞よりも良かったので、これなら大丈夫だと思っていました」

ゴールした瞬間、川田は「正直、勝ったかなと思った」という 【中原義史】

 スムーズに折り合い、前半1000メートルの通過が1分ちょうどの平均ペースを考えれば、このポジション取りは文句なし。「東京に替わるのはマカヒキにとって明らかにプラス。その通りの競馬ができて良かった」と、川田の手綱に導かれたマカヒキは最後の直線525メートルで自慢の末脚を爆発。狭い馬群を割って一気に進出すると、まず前を行く武豊エアスピネルを斬り伏せ、返す刀でサトノダイヤモンドと一騎打ち。勢いは外から迫るサトノダイヤモンドかとも思ったが、ゴール直前で再び盛り返したマカヒキがおよそ8センチのリードを死守し、第83代ダービー馬へと上り詰めた。

「まず、マカヒキがダービー馬になったことが何よりですね」

 最終レース終了後の共同インタビューで発した川田の一言目。何よりも馬を最優先に考える職人肌のジョッキーらしい言葉だと思った。

「凱旋門賞は選択肢の1つです」

凱旋門賞にはすでに登録済み、「十分チャンスある」と友道調教師(右から2人目)は語る 【中原義史】

 史上最高、史上空前……そんな風に形容された2016年のクラシックは、これで1つの区切りがついた。とは言っても、これで全ての勝負付けが済んだと思いたくないのは競馬ファン全員の思いだろう。また同じメンバーで雌雄を決するレースを見たいし、故障で戦線離脱してしまった実力馬、この戦いに間に合わなかったまだ見ぬ素質馬たちも控えている。そして、今年上半期の古馬主要重賞を総ナメにしているドゥラメンテ世代の現4歳馬も相当に強いと言われており、この強い1つ上の先輩に3歳馬がぶつかればどうなるのか、という世代間闘争も楽しみでならない。秋競馬への期待感がこの上なく増している。

 ただそんな中、チャンピオンホース・マカヒキはさらに1つ上のレベルを目指しているのだ。友道調教師が今後の展望について、こう明かした。

「近年稀に見る強い世代のダービーで勝てましたので、これからまた、さらに強いマカヒキになってほしいと思いますね。凱旋門賞にも登録しましたし、選択肢の1つです。斤量差もありますし、輸送してもテンションが上がる馬ではないですからね、十分チャンスがあるんじゃないかと思っています」

どの路線を歩むにせよ、マカヒキが主役となって日本競馬を引っ張っていくか 【中原義史】

 肉体面、精神面から見ても現時点で最高の馬だが伸びしろもまだまだある――とも付け加えたダービートレーナー。菊花賞で二冠を目指すのではなく、勇躍、世界を舞台に羽ばたく可能性が現実味を帯びてきた、というわけだ。

 個人的な思いで言うと、史上最高・史上空前と言われた3歳世代のチャンピオンなればこそ、ぜひとも凱旋門賞に挑戦してほしい。でも、いずれの道を選ぶにせよ、マカヒキの動向、そしてマカヒキ世代各馬の動向が、これからの日本競馬をより面白くしていくのは間違いない。

来週から2017年ダービー馬を目指す戦いが始まる

 そんな黄金世代が歩んだ1年に渡るダービーロードは本当に面白かった。それももう終わってしまったのかと思うと、変に感傷的になってしまいがちだが、競馬ファンには新たな楽しみが待っている。次週から2014年生まれのサラブレッドたちにより2歳戦がスタートする。そう、2017年のダービー馬を目指す戦いが始まるのだ。

 来週からまたどんな新星が飛び出すのだろう? 2013年生まれ世代以上に白熱することを願って、2017年ダービーロードの開幕を心待ちにしたい。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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