高倉監督「進歩している選手を選んだ」 なでしこジャパン米国戦メンバー発表会見

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宮間選手は構想の中に入っている

「米国に勝てる魔法のシステムがあれば教えてほしい」と笑顔を見せた高倉監督 【(C)JFA】

――今回、初陣ということで準備期間もないが、再出発ということで米国戦でチームとして見せたいことは?

高倉 まず選手を集めて顔を見て、いろんなことを感じると思うんですけれども、なでしこジャパンとして引き継がれているチーム力といいますか、組織力といいますか、最後まで諦めずにハードに戦うというところは、新しい選手たちが集まっても表現できると思うので、その辺は変わらず出していきたいと思います。準備がなかなかできない中でも話をしながら、選手の良さ、1人1人の個性を少しでも選手が思いきって出せるようなチームにできたらいいのかなと思います。

――入ってきた選手にはいいものがあるとおっしゃっていたが、佐々木選手や中里選手には具体的にどういったいいものを感じているか?

高倉 佐々木繭選手に関して言いますと、先日行われたラマンガの国際大会で初めて(U−23)代表に呼んで一緒にプレーしました。非常にテクニックがありますし、すごく頭がいいといいますか、戦術理解度が高いですし、状況判断のすごくいい選手だと感じています。いろいろな局面を前もって予測して、その局面をうまくさばいていくといいますか、そういった能力は高いのかなと感じています。

 中里選手に関してはリーグを見る中で、小柄なんですけれども非常に運動量もありますし、予測も優れていて、中盤のこぼれ球を拾って、ボールをつけて前に出ていって、足も振れるという強みがあります。小柄ですが体的にも強いですし、そういったところは海外でどれくらい通用するか試してみたいと思って呼びました。

――監督に就任してから、なでしこ1部でも監督を見かけたし、2部でもスタッフが視察に来ていた。どういったところを感じながら視察していた?

高倉 やはりシンプルにグラウンドの中で、パフォーマンスのいい選手はどの選手かなというところを見るようにしていました。今までチームの中でゲームにずっと出続けているけれどなかなか代表に呼ばれる機会がなかった選手も、どういうプレーをしているか、何を考えてプレーしているんだろうと注目して見るようにしていました。

――ベテラン勢、宮間選手を選ばなかった理由について、もう少し詳しく説明してほしい。また、米国戦ではどのような入り方、具体的なプランを考えているか?

高倉 ベテラン勢の話がさっき出ましたが、未来に向かっていくという構想の中で、伸びしろを感じた選手をまず選びました。宮間選手に関して言えば、代表には選んだんですけれども、コンディションがインターナショナルマッチに出る状態にないということで、本人から辞退ということで連絡をもらってちょっと話をして、少し時間を置こうかというところがありました。今回は外していますが、私の中では構想の中には入っています。

 米国戦に関してですが、ワールドカップ(W杯)の決勝とか最近の米国戦の映像を見たり、今までの戦いやプレーの傾向を見ましたが、最初の10分、15分というところで、相手は自分たちのパワーを生かして畳み掛けてくるような攻撃が常にあるので、そこのところは絶対にしのぎたいなということもあります。W杯の決勝もああいう結果(2−5)になりましたけれども、FK、CKのところ以外を見ますと、それほどやられているという感覚はないので、うまくいなしながら自分たちのペースになるまで我慢して戦いたいなというふうに考えています。

 やはり思ってばかりもいられませんので、これから今後なでしこジャパンの課題になってくると思いますけれど、アタッキングサードに入った時にその後、どうやって点を取るかというところを、とにかくみんなで追求していきたいと思っています。個人の技術であり、コンビネーションであり、アイデアもあります。選手の特徴を把握しながら、出していきたいと思います。選手が集まって2試合ありますけれども、その中で1つでも良い形が出てくればいいのかなと感じています。

ぶっつけ本番の形で1戦目は迎えないといけない

――五輪最終予選では10番は大儀見選手がつけていたが、今回は阪口選手になっている。阪口選手への期待は? また、2試合のキャプテンは?

高倉 阪口選手の10番に関しては、彼女は中盤の底で目立たない仕事といいますか、ずっと澤(穂希)の相棒としてやって、あまり名前が出てこない選手だったと思います。100試合代表では出ていますし、日本の中でレベルを考えると最高峰のものを持った選手だと思っています。より自覚を持って代表を引っ張っていってほしいなという期待を込めて、10番をつけてもらうことにしました。キャプテンに関してですが、今の時点では何人か考えているんですけれども、向こうに行ってから選手と話をして決めたいと思っているので、今誰というのはここでは決まっていないです。

――背番号10を大儀見選手から阪口選手に変えた理由は?

高倉 10番を阪口選手にしたというのは先ほど言いましたけれども、大儀見選手に関しては、やはり彼女はストライカーですので、点を取ることにこだわりをもってほしいということで、そこは変えたということです。9番、FWの点を取る仕事を任せたいということです。

――コロラドは高地だが、どのような難しさがあるか? また体を順応する期間は考えているか?

高倉 本当に高地で1600から700(メートル)ということを聞いています。ここで試合をした経験のある選手は何人かいると思います。行って3日目にゲームなんですが、最初の2日はほとんどトレーニングができないといいますか、(高度に)順応させなければいけないということなので、フィジカルトレーナーとも相談しますけれども、ほとんどぶっつけ本番の形で1戦目は迎えないといけないのかなと感じています。2試合目に関しては何とか体が順応した状態で戦えると思いますが、できるだけのことをして、酸素を持って行くであるとか、なかなか睡眠もとりにくいということを聞いていますので、その辺もできる限りのことを対応していきたいと思っています。

――宮間選手とは話をして、今回は代表に選ばなかったという話をしたが、他にもそのような選手はいたのか。呼びたかったけれど、今回は参加できなかった選手はベテランでいるか。また、新しいチームになるが、新しいシステムになるのか?

高倉 ベテラン勢と呼ばれる選手で選んだのは宮間選手だけなので、他の選手とはしゃべっていないです。システムに関してですが、米国に勝てる魔法のシステムがあればいいんですけれど、誰か知っていたら教えてほしいです(笑)。特に大きく変えることはないと思います。4−4−2であるとか、4−2−3−1という慣れた形でとりあえず入っていこうと思いますけれども、試合をやっていく中で選手がやりやすいシステムがあれば、当てはめていってみようと思います。

――スタッフについて、下の年代から一緒にやっていた大部(由美)さんやフィジカルコーチの広瀬(統一)さんを選んでいるが、コーチに求めていることは?

高倉 大部コーチに関しては、選手時代から長くやっていましたし、(U−)17、19でもずっとやっていく中で、非常にバランスがいいのかなと強く感じていますので、基本的には彼女が私のサポートをしていくと思います。他のスタッフも暫定という形で今お願いしているので、その中でいいバランスが保っていけるのであればそのままかもしれませんし、またいろいろな事情がありますので、少し動きがあるかもしれません。

 役割については、選手とサッカーの話をたくさんしたいなと思いますし、私とか大部コーチが押し付けで、こういうことをやりたいと一方的にやるのではなくて、選手が実際にグラウンドで何を感じて、何がいいと思っているかということは、ある意味選手が一番正しい場合もあると思うので、そこを話して戦い方であるとか、システムとかに関してもそうですけど、柔軟に対応していきたいと思います。ただ、自分自身でこうと決めたことがあれば、妥協せずに選手に伝えていきたいなと思っています。

――初選手の5人の中で、千葉選手、高木選手、池田選手について、代表に呼んだ理由、それぞれに期待していることを教えてほしい。

高倉 GKの池田選手に関しては、非常に全体的な能力、GKとしての資質が高くて、精神的にも安定したものを見せますし、ボールを奪ってからのフィードのところも正確であるので、そういったところの期待も込めて選出しました。

 高木も世代別の代表では名前が常に入っていた選手で、性格的にはおとなしいのですが、持っている能力は非常に高くて、技術もありますし、局面のところでの判断とか読みが非常にいいので、その辺を期待して呼んでいます。この選手はディフェンスのところでやると思うのですが、中盤のところでもできるかなと思っています。

 千葉は世代別では名前が挙がってこなかった選手ですが、先日のラマンガで初めて名前を入れてプレーした選手です。非常に身体能力が高く、技術もあって、メンタル的にもすごく強いといいますか、どんなプレーをするか、私自身も楽しみなんですけれども、上で十分やっていけるんじゃないかなと。トータルで非常にいいものを持っていると思います。

――初陣を迎えるにあたって、ふるさと福島の人にどのようなプレーを見せたいか思いを聞かせてほしい。

高倉 遠くからありがとうございます。本当に福島の皆さんには、私がサッカーを始めて育ったところですので、なかなかまだ震災後、生活が元に戻っていなくて苦しんでいる方々もたくさんいると思いますし、私のふるさとということで期待してくれている人たちもたくさんいると思います。みんなが元気になって勇気を持ってもらえるような試合を、チーム全員でやっていきたいと思います。

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