「日本ラグビーの底力」を示した韓国戦 ヤングジャパンが想定以上の大勝
短い準備期間も「プライドを持って戦う」
主将として日本代表を大勝に導いたSH内田 【斉藤健仁】
4月30日、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場で、ラグビー日本代表は「アジアラグビーチャンピオンシップ2016」の初戦で韓国代表と対戦した。歴史的3勝を挙げた昨年のワールドカップ(W杯)以来、2019年W杯日本大会に向けて初めての代表戦で、攻めては13トライ、守っては零封の85対0で完勝した。
スーパーラグビーに日本チームのサンウルブズが参戦した影響などで、W杯組の参加はゼロ、23人の総キャップは27、トップリーグの若手やU20代表候補で構成され、平均年齢は24歳ほどの“ヤングジャパン”が躍動した。
試合前、不安がない訳ではなかった。昨年、同大会の初戦はアウェーで韓国代表と対戦し、「エディー・ジャパン」でも56対30と苦戦した。しかも韓国代表は4月12日に集合する一方で、日本代表が集まったのは24日。それでもスコッドの中では12キャップと最多を誇るSH内田啓介主将は「準備期間が短いことは最初からわかっていた。それをプラスに変えてチームを作りたい。日本代表のプライドを持って戦う」と意気込んでいた。
韓国代表「バックローの3人にミスを誘われた」
FL安藤(左)、No.8タタフは何度も相手ボールを奪った 【斉藤健仁】
もう一つ光ったのはボールを奪った後の速攻だった。韓国代表のフィジカルを生かした攻撃を我慢強く守って、ターンオーバー後に素早く展開して仕留めていた。中竹ヘッドコーチ(HC)代行も「今回強調しなかったが、ターンオーバーから、意識の高さでトライを量産できたことは想定以上の収穫だったなと思っています」と選手たちを称えた。
それはひとえにバックロー(FL、No.8の総称)の出来が良かったことによる。FL安藤泰洋は低いプレーが得意でワークレイトが高く、昨年、ルーキーながら東芝で先発として活躍したFL山本浩輝は人に強い。また元オーストラリア代表で“ジャッカル”の名手・ジョージ・スミスに憧れるNo.8テビタ・タタフは、何度もボールを奪った。日本でのプレー経験が長い、韓国代表PRシン・ドンウォン主将も「バックローの3人にミスを誘われた。仕事をしていた」と舌を巻いた。
懸念のセットプレーでも韓国を圧倒
スクラムで圧倒し、豪快な突破も見せたPR知念 【斉藤健仁】
2014年のU20日本代表を、W杯で3勝を挙げたエディー・ジャパンのスクラムを強化したマルク・ダルマゾコーチが指導し、2015年のU20日本代表はその薫陶を受けた遠藤哲FWコーチがまとめ上げ、世界大会で「トップ12」に残留。3月、U20日本代表が、オーバーエイジ枠の選手たちとともに「ジュニアジャパン」として戦った「パシフィックチャレンジ」でも、スクラムは武器となっていた。
そのスクラムの文化は4月23日に初勝利を挙げたサンウルブズ、そして今回の若い日本代表にも受け継がれていた。低く8人で組むスタイルは徹底され、相手にプレシャーをかけて、WTB山下一の3トライ、WTB児玉健太郎の5トライ、SH内田のトライの起点となった。
スクラムの要であるHO森太志は「両サイドのPRが頑張ってくれた。控えの2人も含めて本当に力のある選手がいた。この短い期間で、同じ方向で、あとヒットのところを意識した。後ろの5人もエネルギーを持ってやってくれた」と味方を称えた。また森はサンウルブズのメンバーとしても、ブルズ(南アフリカ)戦に出場。「日本代表を引っ張ってきたHO堀江(翔太)さん、木津(武士)とたくさん組ませてもらって勉強になっている。サンウルブズの期間で伸びている」と個人としての成長も実感していた。